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公開日: : 最終更新日:2018/10/23

IR・カジノとキャシュレス社会を考える<後編―1>

この原稿を書いている最中に、消費税10%の緩和策として中小店でのキャッシュレス決済に関して、2%のポイント還元を行う案が政府側から出されたと報道がありました。

来年の10月実施を考えると、あまりに唐突で軽減税率の徹底だけで大変なのにポイント還元など、中小店に負担と混乱を招くのではと危惧をしています。

課題を正面に捉えた王道でなければキャッシュレス化の定着など望むべくもなく、消費税にかこつけた今回の案は、姑息と取られかねないと思うのですが。一石三鳥どころか、二兎を追うものは一兎も得ずにならないことを願うばかりです。

前回のグロス方式、ネット方式に関して、もう少し分かり易く説明をとの声があり日本のグロス方式を、パチンコ市場を例に説明をしたいと思います。

【例】 還元率80%として設定

賞品は買取所にて現金に引き換え

初回 遊技料 10000円でプレイ➡賞品8000円相当(8000円回収)
二回目 遊技料 8000円でプレイ➡賞品6400円相当(6400円回収)
三回目 遊技料 6400円でプレイ➡賞品5100円相当(5100円回収)
四回目 遊技料 5100円でプレイ➡賞品4000円相当(4000円回収)
五回目 遊技料 4000円でプレイ➡賞品3200円相当(3200円回収)
六回目 遊技料 3200円でプレイ➡賞品2500円相当(2500円回収)
七回目 遊技料 2500円でプレイ➡賞品2000円相当(2000円回収)

元々1万円が原資ですが、このスキームでは7回目で売上39200円と計上されることになります。真水の1万円が4万円としてパチンコ産業の市場規模になるのがグロス方式です。

これは理論的な可能性を説明したスキームで、1万円が1時間も経たない内に0円になったり、逆に1万円が10万円なったりと波乱万丈が実態です。

見方を変えれば1万円で4万円分の遊技を提供しているとも言えますが、いずれにしても「パチンコ産業19兆円」というのは、そのグロス方式のスキームで膨れた数値で、真水で言えばその20%にあたる4兆円前後が実際の市場規模と見る方が適正と筆者は判断しています。

なぜこのようなことに拘るのかと言えば、ベースになる数値や認識が異なると、今後の市場動向の見通しや最適な戦略選択に誤りが生じる可能性があるからです。

ギャンブル等の経済貢献について

本来刑法で賭博は禁止されていますが、公営ギャンブルは特別法により合法化され、実施主体である地方公共団体に納付金等を収める制度が定められています。

その代わり消費税の対象から外されています。

一方パチンコは、そのような納付制度はなく、一般企業と同等の事業税、法人税、消費税(グロス方式での売上に対する消費税)が課税されています。

少し本論からは離れますが、利益により納付額が異なる(赤字の場合は免除)公営ギャンブルの経済貢献と、収支に関係なく(赤字であっても)支払の義務が発生する消費税、事業税を支払うパチンコを、経済貢献の視点で比較すると、貢献度の高いのはどちらか一度検証すべきではと思っています。

一方IRカジノでは、一定の利益等を納付金として納めるだけではなく、地域の経済発展に寄与する経済効果を唱えています。

波及効果が高いとされるIR・カジノに関しても、消費税(10%になる)の対象から外すわけですから、納付金や経済効果に関しても複眼的かつ実証的な検証が求められます。

公営ギャンブルにおけるキャッシュレス化を考える

競輪場(車券売場)、競馬場(馬券売場)などは、原則現金で購入、現金で払い戻しとなっています。

ただしインターネット上での車券、馬券の購入は、前回ふれた通り口座振替により100%キャッシュレス化が実現されています。驚くことにJRAでは特定のクレジットカードで馬券が購入できるサービスも行っています。

JRAクレジットカードでの馬券購入

よく考えると競輪場や競馬場に行く人は、ある意思を持って来場するわけで、通りすがりについ入ってしまう人はほとんどいません。

それは場外馬券、車券場でも同じです。特に競輪の場外車券場は、ほとんど会員制で身分証明の確認後IDカードを発行しています。

会員カード<新橋ラピスタ>

施設内風景

これらインターネット環境の購入スキーム(口座振替など)や場外でのID確認システムの導入を想定すると、本場、場外、インターネットを結ぶ完全キャッシュレス化は、心理的課題は別にして決してハードルは高くはないと考えられます。

100%キャッシュレス化が実現すれば、

①現金に係る機器の省力化、コスト削減が実現する。
②現金の処理に係る運用・人件費・ハンドリングコストが削減できる。
③現金に纏わる犯罪(窃盗、マネロン等)の防止、削減できる。
④個別の利用履歴が明確になるため脱税防止に繋がる。
⑤      同上       のめり込み、依存症の防止に繋げられる。
⑥これら一連の省力化、削減により捻出した利益を利用者に還元することが可能になる。

その他にもメリットが考えられますが、ファンの中には疑義や不満を持つ人もいるとは思いますが、長い目で見ればファンファーストになると筆者は確信しています。

ステップとしては、デビットカードで馬券や車券で購入、賞金もデビットカード口座に自動的に戻されるようなスキームからスタートしても良いかもしれません。

パチンコにおけるキャッシュレス化について

パチンコの方向性として、遊技球を直接利用者が触れないで遊技から賞品交換まで完了するシステムの導入が進みつつあります。パチスロでもメダルレスの検討が進められています。

賞球が入った大箱を積み重ねるシーンもいずれは無くなると思われますが、全てデータで管理する、遊技球も一台一台で管理(100球程度を還流させる方式)することで、機歴管理の一元化や大規模な補給管理システムを削減しようとするものです。

現在は遊技機の出玉機能規制など、のめり込み対策等に重点を置いた方向にいる業界ですが、いずれ新たなビジネスモデルなど遊技産業の未来に正面から向き合わなければならない時代がやってきます。

前回一部紹介をしましたが、パチンコホールではキャッシュレス化が進んでいますが、これには少し説明が必要です。

パチンコホールではイン・オン・アウトと言われるホール運営スキームが基本になっています。

①インとは➡遊技代金を支払う➡売上管理
②オンとは➡出玉を集計、カウンターに持ちこむ➡出玉管理
③アウトとは➡出玉に応じた賞品を提供➡賞品交換管理

最初に現金が発生するのが①のインのシーンです。(参考図:マルハンHP)

最初にサンドと言われる機器に現金を入れて遊技をしますが、会員カード(貯玉システム)を直接入れる場合もあります。しかし表向きは現金を入れる。

仕組みなのですが、法律的には現金はパチンコプリペイドカード売上として計上、遊技を終了した後にカードが排出され、残額がある場合は精算機で精算するか、そのまま持ち帰り後日遊技に使う方式になっています。

ただし当日精算しかできない方式を採用して資金決済法(前払式支払手段)の適用外とするシステムと、財務局にカード会社が登録して法の適用(残高の二分の一を消費者に戻すための供託義務)を受け、カードの残額を翌日以降も継続して利用できる(無期限あるいは数年間有効)システムがあります。

ちなみに後者は日本ゲームカード等が提供しているプリペイドカードシステムで、他会社の多くは前者の方式です。

プリペイドカード方式ではあってもはじめに現金ありき(サンドに現金を入れる)が実態で、この部分もキャッシュレスにしなければ本当のキャッシュレス化にはなりません。

ただJ-デビットカードでパチンコカードを購入する方式(写真参照)が導入され、このシーンでは完全なキャッシュレス化が達成されています。

100%キャッシュレス化を考える上では、風適法や資金決済法などの法規制を前提にしなければなりません。

個人的には公営ギャンブルのインターネット決済口座のような銀行口座と遊技口座を設けて、PCやスマホを利用して資金移動を行い、規制にそった上限金額までの遊技を行うイメージになるのかなと思いますが、課題も多く抱えています。

ただ基本的には、遊技の際には遊技カードや生体認証等による本人確認が必要になるかも知れません。

キャッシュレス化のメリット、効用を考えますと、

①遊技機サンド(ビルバリ等)のコスト削減が可能
②精算機等の削減
③現金搬送システムの削減
④それら全般のメンテナンスコスト・人件費等の削減
⑤のめり込み・依存症等の防止対策強化
⑥現金に纏わる犯罪の減少、夜間金庫など現金保守の削減
⑦売上等の経営の透明化、脱税防止などコンプライアンスの強化
⑧従業員など労働環境の充実と生産性の向上
⑨現金に関連するその他の機器、通信費用など全般的な削減
⑩収益向上つながるビジネスモデルの構築

などが挙げられます。

ただ実際はそう簡単ではありません。手数料や通信コストなど既存のインフラを利用する場合には高いハードルもあります。ビジターにはどのような対策がなされるのか、遊技カードなど、およそ実現性に乏しいのではと思われる人もおられるでしょう。

しかし新たなプラットフォームビジネスの登場、そこでのQRコード決済ビジネス等の他産業の展開を検証すれば、パチンコ業界のキャッシュレス化の姿を見出すことは可能だと筆者は考えています。

事実、電子認証技術を活用して、データを改竄できない(改竄した場合は、その記録が残ってしまう)売上情報や払出情報を第三者の情報センターに送信し管理する電子認証管理システム(図)やスマホを活用した遊技情報システム(写真)も稼働しています。

これらを含めたテクノロジーを活用したビジネスモデル・ビジネスインフラの全面的なデジタル化・キャッシュレス化を期待したいと思います。

 

さてもう一方の③のアウトでのキャッシュレス化をどのように考えるかです。

極めてセンシビリティな問題を孕んでいますので、現段階では明確な解決策を提言はできませんが、具体的には次のような課題があると思われます。

課題<1>

アウトの現物は、あくまで賞品であり物品に限られています。

しかし問題は、賞品を買い取るための専用の賞品と、その賞品を買い取る買場(賞品買取所)が存在し、最終的に現金化できる実態があることです。

簡単に言えばパチンコ専用・限定で金券ショップが存在しているということです。

この点に関しての是非や見解はここでは述べませんが、ここでのキャッシュレス化に関して、筆者なりの考えを紹介したいと思います。

持ち込まれた特定賞品を現金に交換し、その多くは再度パチンコ資金に投入されています。(一部は、賞品に交換せず貯玉して再プレイ)

また特定商品の交換率は全賞品の90%以上を占めており、食料品や消耗品などの交換は10%にも満たない状況です。

これらは風適法の「賞品は物品に限る。有価証券は禁止」などの事項が背景にあるわけで、このままでは③アウトのキャッシュレス化は一ミリも動きません。

そこで筆者が提案したいのは、有価証券禁止事項の規制緩和(あくまで条件付きで)による、キャッシュレス化の実現です。具体的なキャッシュレス化のシーンを次回で説明したいと思います。

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