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公開日: : 最終更新日:2015/06/03

現金社会とクレジットカード

まえがき

「消費大国である日本では諸外国に較べてクレジットカードがあまり利用されていない、なぜか?」という質問を、私は、VISAやMasterCard本部からときどき来日するお偉いさんから受けました。

「低い」と言ってぶつぶつ嘆くタイプと、「低い、だから将来性がある」と勇み立つタイプとがありました。この質問をめぐる会話によく出てきた単語に「現金社会」と「カード利用度」という言葉がありました。

当時は私もこれと言った智識もなく、もっぱら聞き役に回っていました。今となり、すこし答え方がわかってきたような気がします。

ミャンマーも徹底した現金社会だそうですが、統計はありません。以下は日本について調べたものです。、いくつかの角度から日本人の現金選好(嗜好性)ををまとめてみましょう。

1.現金社会とは

現金社会とは「現金選好が高い社会」、「現金嗜好が強い社会」、あるいは、「現金を持っていることで安心し、現金で支払うことを好む人が多い社会」という意味です。

「金選好」という言葉があります。金(gold)を好む意味です。それなら現金選好という言葉が生じました。ある国、ある社会が現金社会であるかどうかは、あくまで比較の問題です。

一定の定義があるわけではありません。いろいろな統計の数字を較べてみて「この国は現金社会」と言うわけです。

2.現金社会を示す統計

●日銀2012年の調査資料 現金が個人金融資産に占める割合

日本 米国
2003年度末 56.2% 15.5%
2008年度末 55.4% 15.2%
2011年度末 55.7% 14.7%

●クレディセゾン2011年度決算説明資料 決済手段の比較

日本(年度末) 米国(年末)
現金 59.1% 19.4%
クレジットカード 11.1% 24.5%
デビットカード 0.3% 20.6%
銀行振込・口座振替 21.1% 12.9%
プレペイドカード・電子マネー 1.7% 4.4%
コンビニ決済 3.0%
小切手 18.1%
代金引換 1.3%
ペイジー 2.3%

●VISA Worldwide Japan調べ 2012年1月11日 日本の決済手段比率

現金 84.0%
クレジットカード 14.4%
プレペイドカード・電子マネー 1.3%
デビットカード 0.3%

●㈱JP Press社調べ 2010年1月19日

日本では、取引の85%が現金で決済されている。クレジットカード利用率は13%にすぎない。

●ATM現金引出限度額 YAHOO 検索

日本 原則として50万円
米国 大手銀行 400ドル(約4万円)
小銀行 200ドル(約2万円)
特約で 1,000ドル(約10万円)

3. クレジットカード利用度とは

「クレジットカード利用度」は簡単にいうと買物をする際、貴方はどの程度クレジットカードを使うか、ということです。

カードの使用頻度が高ければ、「クレジットカードの利用度」が高い、というわけです。現金社会と言う言葉があるのならば、「カード社会」と言う言葉があるはずです。

なぜ、現金社会やカード社会が存在するのでしょうか? 理由はいろいろあるようです。後で説明しましょう。

4.クレジットカード利用度を示す統計

●㈱フェアカード社調べ

2001年から2010年までの10年間で、カードの利用率は2倍の伸びを示したが、民間最終支出に占めるクレジットカードの支払額の割合は12%に過ぎない。

2000年 6%
2005年 8.2%
2008年 10.3%
2009年 11.3%
2010年 12.0%

●同上

日本 米国 韓国
一人当たりのクレジットカード 2.7枚 2.6枚 2.1枚
保有枚数カード利用率 12% 24% 58%

●日本通信販売協会 第30回通信販売企業実態調査報告書 決済手段の比較

2007年度 2010年度 2011年度
郵便為替 16.0% 13.0% 12.1%
代金引換 33.8% 32.5% 32.6%
コンビニ支払 23.6% 24.1% 24.3%
銀行振込 5.7% 4.7% 5.9%
クレジットカード 17.7% 23.2% 23.8%
電子マネー 0.6% 0.8% 0.4%

●東大医学部付属病院の会計窓口 筆者調べ

ある日の午前11時から12時までの1持間における現金・クレジットカード
併用支払機の利用状況・・・・クレジットカード利用者 10人に1人 10%

●タクシー料金のクレジットカード払い・・・・筆者調べ

  • 40人の乗客中 カード支払客は5人…12.5%
  • 24人の乗客中 カード支払客は3人…13%
  • 現在ほとんどの大手タクシー会社はクレジットカード会社の加盟店となっている。
  • 個人タクシーはクレジットカードを扱わない。理由としては、加盟店手数料が高い。運転手がカード払いを嫌がる。個人タクシーは加盟店になり得ない。端末機のコストが高い、などの点が挙げられます。

●日本の消費者信用統計 平成25年版 日本クレジット協会

  • ショッピング金額の民間最終消費支出に占める割合…17.4%
  • 現金…56.2%
  • クレジットカード…16.2%
  •  デビットカード…9.3%
  • 電子的支払…26.9%
  • 電子マネー…0.5%

5.クレジットカード利用度の国別比較

●日本経済新聞 2012年4月25日夕刊

2010年におけるクレジットカードを使った決済額の合計が民間最終消費支出に占める割合

日本 19.7%
韓国 50%
米・英国 30%程度

●日本の消費者統計25年版 日本クレジット協会 各国のクレジットカード利用率

日本 12%
韓国 58%
米国 54%
英国 53%

●YAHOO 知恵袋検索

カナダ 50%
韓国 50%
オーストラリア 37%
英国 27%
米国 20%
日本 7%

●VISA Worldwide Japan 2012年1月11日調べ

ノルウエー 85%
香港 63%
オーストラリア 54%
ニュージーランド 54%
中国 41%
米国 35%
マレーシア 30%
アラブ首長国連邦 24%
日本 14%
サウジアラビア 14%
フィリッピン 9%
ロシア 7%

●㈱フェアカード社調べ 民間最終消費支出に占めるクレジットカード決済の割合

日本 12%
韓国 58%
米国 54%
英国 53%

● 経済産業省報告 平成22年度「わが国におけるキャッシュレス社会の今後の進展に関する調査分析」

現金 クレジットカード デビットカード 電子的決済
日本 57% 16% 26.6%
米国 21.3% 27% 17% 34%
英国 24.7% 17% 27% 31%
フランス 22.9% 32% 28% 17%
韓国 33% 39% 5% 17%

6.クレジットカード利用度が低い理由

私なりに考え、まとめた理由をいくつか並べておきます。外に適格な理由をご存知の方は是非教えてください。

① 基本的な理由

クレジットカード導入時、銀行は銀行法第5条により、直接クレジットカード業務を行うことができず、カード分野への進出意欲が薄かった。

  • クレジットカード業務は周辺業務と位置づけられていた。
  • キャッシング(現在の銀行ローン)は金融商品とはみとめられていなっかた。
  • 1961年割賦販売法制定時の国会付帯決議により、銀行系カード会社は、リボルビングの取扱を禁止されていた。
  • 個人信用情報機関の業態を仕切る壁が高かった。

② 国民性による理由

  • 日本は金(現金)選好が高い国である。
  • 多発するカード犯罪により、「カードは怖い」という意識が強く、カードへの抵抗感、警戒感が、財布の紐を握る年配の主婦層に深く浸み込んでいた。
  • 「借金はよくない」という倫理観が強い。
  • 日本の治安がよく、現金を持ち歩いても不安がない。
  • 一般的に見て、日本人はクレジットカードへの関心が薄い。
  • クレジットカードの智識がない。学校では一切教えない、民間でも教える場所がない。

③ 政府のクレジットカード業務に対するスタンス

カード利用度の高いノルウエーや香港の政府当局がどのようなスタンスをとっているかは分かりませんが、お隣の韓国の例を見ると、日本の戦時中の「産めよ増やせよ」の号令(官により奨励)と同様、政府がカード利用を奨励し、いろいろな優遇措置を講じています(注)。

わが国では、経済産業省がカード業界の動き・問題点を見守り、三菱UFJリサーチ&コンサルティングに依頼して年に1回程度報告書「クレジット産業の健全な発展及び利用等に向けた調査研究」を発表していますが、いまだ「注意深く見守る」、「われ関せず」の域にとどまり、カード利用を奨励するまでには到っていません。

(注)税制上の優遇措置。クレジットカード利用明細書の番号を抽選券として毎月くじ引きを行う。カード高額利用の際の身分証明書の提示義務、など。

④ 分母と分子それぞれの増加率が同じならば

最近ふと思いつきました。民間最終比率とクレジットカード売上高両者の年間伸び率がイコールならば、%として出てくる答えは同じではないか、と。詳しい計算を試みる力がありません。どなたかやってみてください。

7.わが国におけるクレジットカードの将来性

金選好、現金選好が高く、高額紙幣への信頼感・安心感が強く、借金を嫌い現金で支払う気質は日本人特有な性格であり、この気質を変えることはなかなか難しいでしょう。

しかし、法制面での壁は取り払われつつあり、個人信用情報機関の相互交流も実現しています。メガバンクもクレジットカード業務に本格的に取り組む姿勢を姿勢を示してきました。

税金や公共料金、賃貸住宅の家賃といった膨大な市場も門戸を開き始めています。アメリカナイズされた若者の世の中が迫っています。

カード業界を取り巻く環境は好転しつつあります。微力な私はカード業界の将来性を云々することはできませんが、カードの利用度を高めるために最後に私なりに考えたことを付け加えておきます。

  • クレジットカードの教育に一層力をいれること。
  • 米国では、民意の盛り上がりにより「小切手からカードへの移行」が進みつつあると伝えられています。日本でも、カードの教育を通じこのような民意の盛り上がりを図ることができないでしょうか。
  • デビットカードや電子マネーの動向を見守ること。
  • 地域通貨、ポイントカードに注意すること。
  • そろそろ顕在化してきた銀行離れの動きを見守ること。
  • 新しいタイプの決済事業者がリアル取引へ進出しています。その動きをフォローすること
  • クレジットカード決済の潜在的需要があるマーケットを開拓すること。
  • 情報セキュリティ対策を推進すること。
  • クレジットカード業界の構造変化に対応する新しい加盟店業務を考案すること。

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