公開日: : 最終更新日:2015/05/21
クレジットカードの落とし穴
まえがき
クレジットカードが日本に導入された1960年ごろでした。その時から数えると、約半世紀が経過しました。この間、カード業界の努力によりクレジットカードは広く普及し、いまやカード無しの生活は考えられなくなりつつあります。
反面、裏社会の犯罪者にとってもクレジットカードは宝の山となり、それなりに彼らの生活を潤しています。しかし、彼らの活躍(?)により 貴重な人生を失った人も沢山います。
クレジットカードは便利です。しかし怖ろしいものです。たかがカード、されどカードです。今回は、クレジットカードの「落とし穴」という観点からこの小文をまとめてみました。
1.必ず守らねばならない3つのルール
- クレジットカードが届けられたらすぐサインすること
新しいクレジットカードが届けられたら、すぐ裏面の書名欄にサインをしておきましょう。サインせずに持ち歩き、うっかり落としたり、掏られたり、盗まれたりしたらどうなるか?
不正に手に入れた人は、これ幸いとばかり自分で署名して利用限度額まで使いまくります。ゴールドカードや、ブラックカードなどは利用限度額はかなり高額に設定されています。
きちんと署名していれば、すぐ紛失届けを出し損失を保険でカバーできますが、サイン無しの場合は損失は自己責任となります。10万円落とせば(掏られれば)、あなたの損失は10万円で済みますが。1枚のカードを落とせば、損失は数百万円になることがあります。 - クレジットカードは家族や友人でも決して他人にはに渡さないこと
「これ、代わりに使って払っておいて」と他人に頼むことがありがちですが、クレジットカード会社との間の契約違反になります。なにか事故があり損失が発生すると責任を問われます。 - 暗証番号(PIN=Persanal Identification Nunber)を他人に洩らさないこと
暗証番号は、あなたとカード会社との間で決められた特別な番号で、「あなたであること」を立証する番号です。PINは「暗証番号」と訳されており、ちょっと分かりにくいですが、英語の「identification」は「ある人であることを見分けること」という意味です。
要するにあなたの身分証明番号です。日本人は案外このPINの扱いがルースだといわれています。絶対に誰にも教えないようにしましょう。一端他人に漏れるといくらでも悪用されてしまいます。
2.クレジットカードの落とし穴
- リボ払い
リボ払いの意味は「決済」の項で説明しました。この制度で最も用心すべきことは、いつの間にか借金の残高が何百万円にも膨れ上がってしまっていることです。
アリ地獄と同様、リボ地獄という言葉があります。安易な気持ちでリボ払いを始め、気がつくと借金は数十万円、数百万円という借金地獄に陥り、もがけばもがくほどズルズルとすり鉢の底に落ちていき、骨までしゃぶられることとなります。 - 年会費無料
年会費無料というカードには、充分注意すべきです。「無料」とあるのですぐ飛びつくのは危険です。会員規約をよく読んでおきましょう。
●最初のxx年間(たとえば2年間)は無料ですが、その後は有料に切り替わる
●募集時無料とあるので安心していたら、途中で突然有料に切り替わる。気がつかずにいるといつの間にか年会費が徴収されだしていることがあります
●年会費は無料でも、解約時は有料である
●年会費は無料でも、カード発行手数料が徴収される
●無料なのは条件付。1年間で例えば10回以上、あるいは10万円以上カードを使った場合のみ無料となり、この条件を満たさないと有料になる
●リボ払いにしなければ有料となる
●年会費は無料でも、会員費や盗難保険料がかかります
●大学生時代は無料ですが、社会人になると途端に有料となる - 手許に現金がなくても買物ができる
クレジットカードはまことに便利なものです。お金の持ち合わせがなくても買物ができます。気が緩みつい不要な買物をしてしまいます。 - 金持になった気分になる
カードを持つと、一種の催眠状態に陥る人があります。いつでも、なんでも、買えるという気分になるわけです。あまりにも簡単にお金を使ってしまいます。 - みんなが使っているから自分も使ってよい、という気になる
みんなで渡れば怖くない、という心理状態です。カードは誰でも持っている、使っているという風潮が一般的になり、借金するという気持ちが薄れてしまいます。 - 計画的にお金が使えなくなる
現金で生活していると、必要なものをまず購入し優先度を常に考えますが、カードを持つと、ついこの計画性が失われてきます。 - 節約の心が失われる。
カードは便利です。家の中で寝そべっていても、おいしいもの、欲しいものをネットのワンクリックで届けてもらうことができます。節約心、勤倹貯蓄の心が失われていきます。 - むやみやたらにカードを持ちたがるようになる
ポイントに気をとられて、進められるままにハウスカードを申込み、財布の中身はカードのみとなります。カードの維持費用を一度じっくり考えてみてください。 - クレジットカードを落としたら…
くどくど繰り返しません。悪用されたら、利用代金はすべてあなたに請求されてきます。 - カードの利用明細書の中身をチェックしないで捨ててしまう
これは怖いことです。他人が悪用したことも気がつかず、カード利用代金はあなたの銀行口座から引き落とされています。 - すぐキャッシングする
ATMがあればいつでもキャッシングができる、便利ですが、現金管理の心理を緩ませます。クレカ貧乏という言葉をご存知ですね。 - カードで他人におごりたがる
虚栄心のあらわれの一種です。見栄を張って「おれが払っておくよ」とやりがちになります。 - クレジットカード代金の支払いをつい忘れてしまう
個人信用情報の網の怖さを充分認識すべきです。自動振替制度で引き落とされる銀行残高が不足して催告され、あわてて残高を補充するという経験を持っている人は多いようです。このたった1回の事故情報は原則として10年間個人信用情報機関に記録され、あらゆる金融機関に流れ、必要時に参考とされます。
「クレジットカード・ヒストリー」という言葉を覚えて置いてください。あなたのカード情報は些細なことでも一切記録されているのです。
米国の人はこのクレジットカード・ヒストリーをとても大事にしており、場合によっては裁判沙汰も辞さないといわれています。これにくらべて、日本人の暢気なこと、ただただ呆れるばかりです。 - クレジットカード利用限度枠
利用限度枠は次のとおり分解されます。例をあげておきます。
限度枠 (100万円) |
ショッピング枠 (70万円) |
1回払い枠 (10万円) |
|
---|---|---|---|
割賦払い枠 (60万円) |
分割払い枠(20万円) ボーナス払い枠(同) リボ払い枠(同) |
||
キャッシング枠 (30万円) |
割賦払い限度枠60万円を使い切ってしまうとどうなるか。カード会社の方から「限度枠を増やしましょうか」と電話がかかってくる場合がありますが、これは会員が優良である場合に限ります。
会員の方から限度枠の増枠申請という手がありますが、このときの審査はとても厳しくなります。めったにOKはでません。
増枠が認められない場合は、このカードはもう使えません。やむをえず、別のカード会社に新しいカードを発行するよう頼むこととなります。こうして、借金を返済するためのカードがまた1枚手元に増えてくるわけです。
新しいカードも手に入らなくなったらどうなるか。銀行ローンに頼るしか方法はなくなります。その後は、恐ろしい消費者金融会社に頼るしかありません。借金地獄、蟻地獄、多重債務者の始まりです。
3.カード即日発行
蟻地獄をご存知ですね。軒下などの乾いた砂地にすり鉢状のくぼみを作り底に潜んで獲物を待つウスバカゲロウ科のアリジゴクという虫です。
蟻が迷い込んでくると、砂をかけ底まで落としこんで捕食します。蟻がもがけばもがくほどジリジリと底に落ちていく様は可哀相です。
人間界の借金地獄と似ています。この虫と似ているのが一部の悪徳業者です。ろくに審査もせず、カードを作り上げて法外の発行手数料をせしめ、次ぎの「限度枠現金化」業者を紹介します。
この業者は、手を組んでいる悪徳商店を紹介し、ショッピング枠一杯まで高級品を買って来いと勧め、商品を安く買い叩き、僅かな現金を払います。この人の借金残高はさらに膨れ上がるわけです。
4. クレジットカードを持たないほうがよいタイプの人とは
持つ人の性格の問題です。厳しい言い方ですが、次に述べるタイプの人は、クレジットカードをなるべく持たないほうがよいと愚考します。
- お金にルーズな人
- だらしない人
- 極端なお人よし
- 虚栄心が強い人
5. 持ちたい人から持たない人へ
「カード貧乏」という言葉があります。ステータス・シンボルとか、マイルが貯まる、限定ポイント5%、などのカード会社の巧みな宣伝にのせられて、カードを持つ人が増えています。
クレジットカードを利用する人は貧乏な人が多い、金持ならわざわざ高い金利を払って支払いを先延ばししなくても、現金で払ってすべてお終りとしますカード人間になるか、現金人間か、あなたは、どちらを選びますか。
なお、カードを使うとしても、翌月1回払いは、現金払いと同じであることを付け加えておきます。速いものです。昨年(2014年)5月にお誘いを受けて「クレジットカードを持ちたいけれど持てない人へ」という題目で、この愚作を書き出してから1年近く経ってしまいました。
皆さんが「クレジットカード」の中身を理解して、正しく、便利にクレジットカードを利用してもらいたいという一心から、スタートした次第です。この小論を読んで、皆さんの中から1人でもクレジットカードを「賢く使う人」「持たない人」「持ちたくない人」が増えてこられたら望外の喜びです。
クレジットカード会社から要らざることを書くとお叱りを受けるのを覚悟の上で書きました。以上で、この愚作はお仕舞にします。さようなら
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