公開日: : 最終更新日:2015/01/21
デビットカード
まえがき
デビットカードはキャッシュレス社会の実現に貢献する立役者と言われています。このカードは、クレジットカード(後払い)とプリペイドカード(前払い)の中間に位置し、購入と決済とを同時に行う(同時履行)カードです。
欧米では小切手の代りに使われだした(当時はチェックカードと呼ばれていました)と伝えられていますが、現金払いが広く深く浸透している日本では最近まであまり認知度は高くありませんでした。
1998年春、郵政省と富士銀行が現在のデビットカードの構想を纏め上げました。以来約20年の間にデビットカードは着実に進歩を遂げてきました。本項では、その歩み、内容をまとめてみたいと思います。
1. デビットカードとは
預金口座と直結し即時に取引の決済ができるキャッシュカードのことです。預金残高の範囲以内で自由に使うことができる仕組となっていますので、利用限度額は預金残高です。
ただし上限金額には若干の例外(当座貸し越し的なもの)もあります。日本では、VISA, MasterCard, JCBなどの国際ブランドカード会社や銀聯カードなどの大手カード会社のブランド名を冠したものが多く、日本デビットカード推進協議会に加盟した銀行のすべてのデビットカードが「J-Debit」と総称されています。
2. デビットカードの誕生
旧大蔵省が1984年5月に金融機関向けに発出した機械化通達がきっかけとなり、日本各地でデビットカードサービス(通称 銀行POS)の導入が図られました。これがデビットカードの誕生であると言えましょう。
この通達は、利用者が事前に口座振替依頼書を取引先銀行に提出しなければならないなど煩わしい手続を定めていましたので預金者にあまり歓迎されず、このサービスは当初は伸び悩んでいました。
しかし1997年この通達が廃止され、翌年、日本デビットカード推進協議会が設立されたのを機に、2000年3月にJ-Dbitと言う名称の下に,本格的なデビットカードサービスが始りました。
現在は、すでに発行されているキャッシュカードの9割以上をカバーする約1600の金融機関のキャッシュカードがデビットカードとして利用され、全国の加盟店で設置されたデビットカード読取端末機(銀行POS)も約33万個に達したといわれています。
3.デビットカードの特徴
以下のごとくいくつかの特徴があると言われています。
- 銀行に自分名義の預金口座がありさえすれば、年齢の区別なく信用状態の審査もなく誰でもこのカードを持つことができる
- お金の使いすぎを抑えることができる
- カード使用時の手続きが簡単である(暗証番号を入力するだけ)
- クレジットカードと較べると、利用者還元のメリットは少ない(加盟店手数料等の還元資源が少ない)
4. 日本デビットカード推進協議会の誕生
日本デビットカード推進協議会は当時の郵政省と富士銀行により1998年6月22日に設立され、翌1999年1月4日に8つの金融機関と8つの加盟店(百貨店など)によってスタートしました。
2000年3月6日にどう協議会の内部に資金決済を容易にするクリアリングセンターが動き出し、サービスは本格化しました。
5. J-Debit
デビットカードは、当初は日本のあちこちの金融機関が利用し始めましたが、1998年の日本デビットカード推進協議会の設立を機に2000年3月から「J-Dbit」というサービス名の下に統一されました。
6. デビットカードの種類
デビットカードには、オンライン・デビットカードとオフライン・デビットカードの2種類があります。
- (ア) オンラインデビットカード
商品を購入しデビットカードを提示すると、店員は銀行POSにこのカードを挿入(スワイプする)します。そうするとリアルタイムで利用者の銀行口座から買物代金が引き落とされ、お店の預金口座に振替られます(実際には、後述するように加盟店口座への入金日は翌々営業日です)。これがオンライン・デビットカードの仕組です。 - (イ) オフライン・デビットカード
利用者の預金口座からの買物代金引落しは数日後、あるいはカードによっては1~3ヶ月後になります。即時引き落しでないため、クレジットカードの場合と同様、買物時点で預金口座に残高がなくても買い物ができることとなります。
この場合には、銀行が加盟店に対しては利用者に変わって立替払いをし、利用者には与信することとなります。利用者から代金回収ができなくなることもありますが、その場合には、銀行側が損失をこうむることとなります。
7. デビットカードのメリットとデメリット
- メリット▼
- (ア) 審査無しで発行できる(若年・高齢者層の区別がない)
- (イ) 現金を持ち歩く必要がない、ATM現金引出手数料を節約できる
- (ウ) お金の管理(領収書を整理、家計簿をつける)が容易になる
- デメリット▼
- (エ) ポイントの還元率がクレジットカードに較べて劣る
- (オ) 特定の銀行に囲い込まれる
- (カ) 年会費がかかる
8. デビットカード決済の当事者
まず、デビットカードの当事者たちとその間における関係ならびに情報伝達方法を頭に入れてから、次ぎの7項のデビットカード取引決済の流れを追ってください。
- A銀行
デビットカード発行銀行(イシュア)
デビットカード保持者名義の勘定が開設されている - B銀行
デビットカード加盟店を世話する銀行(アクワイアラ)
加盟店名義の勘定が開設されているA銀行とB銀行が同一の場合もあります - C銀行
デビットカード取引関連で生じる銀行間債権・債務の決済尻を決済する銀行 - 加盟店
デビットカード加盟店、レジに銀行POS(注)を設置
(注) 1984年5月の大蔵省(当時)の金融機関向け機械化通達により実現されました。
小売店の(POS販売時点情報管理システム)と銀行のコンピュータを通信回線CAFISで結ぶことで、商品代金を利用者名義の口座から 加盟店名義の口座へリアルタイムで振替えるシステムです。 - クリアリングセンター
デビットカード取引から生じる売上伝票を整理し相殺する機関 - CAFIS
A銀行、B銀行、C銀行、加盟店、クリアリングセンター、加盟店を結ぶ通信回線 - 利用者
デビットカードで買物をする消費者
9. デビットカード取引決済の流れ
- 買物をしデビットカーを提示 (x日)
- 銀行POSを通じ取引内容を通知し、代金振替を依頼
- 利用者の口座から代金を引きとした旨を通知
- 商品を引き渡し
- 振り替えデータを通知
- 商品代金にA行の手数料や通信費等を織り込んで計算し他の振り替えデータと相殺し、各銀行ごとの決済尻を算出し、これを通知(x日プラス1日)
- 決済を完了した旨通知 (x日プラス2日)
- 加盟店口座へ入金した旨通知
10. 現在活躍している主なデビットカード
沢山ありますが、とくに宣伝されているデビットカードを幾つか挙げておきます。
- (ア) SURUGA VISA デビットカード
- (イ) 楽天銀行デビットカード
- (ウ) JNBVisa デビット
- (エ) りそなVISAデビットカード
- (オ) あおぞらキャッシュカード・プラス
- (カ) 三菱UFJ-VISAデビット
- (キ) イオンデビットカードJCBデビットカード
- (ク) MasterCardデビットカード
信託銀行(三井住友信託銀行を除く)、第2地銀グループの一部の銀行、JAバンク、新たな形態の銀行(ジャパンネットバンクを除く)、職域信用用組合等は参加していません。
また、当時の東京三菱銀行は郵政省との関係を理由に日本デビットカード推進協議会に参加しませんでしたが、UFJ銀行との合併を機に、2008年からデビットカードを取扱うようになりました。
少し古い数字ですが、2010年2月17日に発表された日系メッセのNew Payment Reportの実績値(2007年と2010年)と予測(2015年)を引用しておきます。
民間最終消費支出額に占めるカード決済額の割合 | |||
---|---|---|---|
2007年 | 2010年 | 2015年 | |
クレジットカード | 9.84% | 10.40% | 11.28% |
デビットカード | 0.28 | 0.31 | 1.30 |
プリペイドカード | 1.37 | 1.94 | 4.3 |
現金など | 88.52 | 87.39 | 83.19 |
この表で明らかのとおり、デビットカードの市場占有率は低く、現在のところ現金選好の高い日本ではデビットカードは「あってなきがごとし」の有様です。しかし、デビットカードは日本人の国民性にうまく合致していると考えられませんか?
また、デビットカードは、改正割賦販売法の枠外にあり総量規制や金利規制の適用を受けていません。
このように見ていくと、今後デビットカードが伸びるか否かは、次ぎの2点にかかっていると言って過言ではないでしょう
- デビットカードの認知度の向上
- インフラ整備の進捗(銀行POSの普及)
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