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公開日: : 最終更新日:2015/01/21

おサイフケータイ

まえがき

牛若丸と弁慶、武蔵坊弁慶の七つ道具、皆さん御存知ですね。この七つ道具、弁慶が登場する舞台ごとに少しずつ異なります。代表的なものを挙げると、鉄熊手、薙刀、櫟(イチ)の固い木に鉄伏せした鉄棒、木槌,大鋸(のこぎり)、まさかり、刺又(さすまた)の7つです。

よくこんな嵩張った重いものを持って歩けたなと思います。さらにもう一つの例、鎧兜に身を固めた戦国武士のもつ武器を調べてみました。槍、弓矢、大刀、脇差、短刀、鎧通し、小柄など、七つあります。

おサイフケータイとおよそ関係ないとお考えでしょうが、おサイフケータイを調べていて私はちょっと思いつくことがありました。おサイフケータイって、弁慶の七つ道具や戦国武士の七つの武器と「どこか似ているなー」と感じたわけです。私の感じ方が狂っているかもしれませんが、この項を読んでいただければ、なんとなくなるほどと思われるはずです。

1. おサイフケータイとは

おサイフケータイとは携帯電話に非接触IC Felicaを取り込み、その携帯電話を専用端末(読取り、書き込み端末、R/W)に「かざす」だけで、いろいろなサービスを提供するIC搭載携帯電話のことです。

言い換えれば、おサイフケータイは、非接触ICカードのアプリケーションを利用できるようにした携帯電話とも言えます。端末容器(鎧兜)にしっかりと身を固めた携帯電話(戦国武士)がいろいろな武器(サービス)を振りかざす(提供する)点を見て私は「どこか似ている」と感じたわけです。

おサイフケータイは、R/Wにかざすだけで、R/Wから発信される電波を受けて、体内のICを駆動させ、さまざまな処理を行い無線で情報を伝達します。

「おサイフケータイ」はNTTドコモの登録商標です。NTTドコモは、おサイフケータイ機能の普及を優先させるため囲い込みを行わず、他社にも商標権をライセンスしています。

2. 非接触IC

ソケットと電球、プラグとコンセント、充電器と携帯電話など、金属接点やコネクターを介して電気を流すやり方を接触方式といい、これに対し、コードレス電話、電気シェーバー、電気はブラシなど、金属接点やコネクターの世話にならずに無線で電流を流す方式を非接触方式といいます。

3.Fericaとは

非接触ICの仕様にはFelicaという規格と、国際標準規格として認められたISO/IEC14443のtypeAとtypeBという2つの規格があります。Felicaは国際標準規格ではありません。ソニーが1988年に開発しました。

ソニーはこの商品の名前を、英語の「至福」を意味するfelicityとCardとを組み合わせてFelicaと名付け登録商標としました。ICチップFelicaは、非接触型ICカードのための通信技術として開発されました。

接触型と非接触型との違いは前述したとおりです。非接触型ICカードは、R/W端末から電磁誘導によりICカードに電力を供給して「キャリアの変調」によりR/Wとカードの間で通信を行う仕組です。

無線による通信では、音声などの情報を何らかの方法で電波に乗せてやらなければなりません。この「なんらかの方法」を専門用語で「キャリアの変調」と言います。難しい話はこれで止めます。

Felicaはとにかく無線で情報を送受信する仕組です。Felicaは、ICカードや携帯電話、腕時計などに搭載されて活用されています。

4.おサイフケータイの特徴

通常、おサイフケータイの特徴としては次ぎの3点が挙げられます。

  1. いつでも、どこでも、誰でも持ち運びができる。
  2. かざすだけで作動する、操作が簡単。
  3. 携帯電話のソフトウエア(注)を利用したさまざまなサービスを提供する。
    (注) このソフトウエアには、次ぎの2つの機能が書き込まれています。
  • インターネット通信機能
  • 利用者がコンピュータ上で自分がやりたいことを自作することができる機能。なお、この「携帯電話のソフトウエア」に対比して、システムソフトウエア)があります。
    これは、コンピュータの稼動に必要な固定されたソフトウエアのことです)。

5. いつ誕生したか

2004年、NTTドコモがサービスを開始しました。その後、KDDIやソフトバンク(当時はVodafone)が追随しました。ふぇリカネットワーク社によると、2011年9月現在で、累計出荷台数は181百万台を記録しました。

6. おサイフケータイが提供するサービス

以下に示すように、いろいろなサービスがあります。

  • 決済
    前払いと後払い、2つの機能があります。前払いは、Edy, Suica,nanaco, WAONなど、後払いはiD,QUICPay, Smartplus, VISATOUCH, Paypass, PiTaPaなどが代表的なものです。取引や残高、利用履歴を確認する機能もあります。残高は携帯電話の通信網を通して補充することができます。なお、PaypassのみがType AとTypeBの規格を採用しています。他はすべてFelicaを用いています。
  • 交通
    Suica、PASUMOなどが代表的なものです。グリーン券や特急券の購入、マイレージ残高確認、空港のセキュリティゲートや登場口での利用もOKです。
  • 本人確認
    公的なものとしては、住民基本台帳。運転免許証、パスポートなど、民間用としては、社員証、学生証、会員証、入退室管理、パソコンやプリンターの起動制御などに使えます。
  • セキュリティ
    ビルの入退室管理、ホテルのルームキー、住宅の鍵など。
  • 電子ポスター
    キオスクなどに置かれたR/Wにかざすだけで、最新の広告情報が読めます。
  • 電子クーポン
    従来は、クーポン券は紙が主流で手間がかかりました。おサイフケータイはR/Wにかざすだけでクーポン券として使えます。

7. おサイフケータイがガラパゴス化される理由

ガラパゴス化という言葉については、後述する「クレジットカード業界の七不思議」の項で説明します。便利なおサイフケータイがなぜ世界で普及しないのか。いろいろな説があります。

とくに、「電子決済ビジネス」野村総合研究所電子決済プロジェクトチーム、コラム③、p.215は示唆に富む記事を示しています。私は(生意気な私見をお許しください)、この問題の根底には、日本の文化、島国日本の国民性が絡んでいるのではないかと考えています。

一般的に言って、日本の企業は海外進出が苦手です。言葉の問題、シャイな性格、現地人との付き合い下手、現地の環境になかなか溶け込めない、現地の使用人にまず日本文化や仕事の進め方を教え込み、その後やっと仕事にかかる、などの障害があります。

この国民性に加えて、コストの問題があります。日本の優秀な技術者は、一つに器具になんでも詰め込む「万能機器」を好む日本人のニーズに気を使いすぎ、精緻すぎる規格を考え出し、外国人が驚くような商品を作り上げます。

しかし、この商品は精緻・複雑過ぎて「simpler the better」 という世界の人々の好みに合いません。しかも、その根底をなす規格Felicaが世界標準機構のISO/IECに認定されていません。

なぜ認定されなかったのか? あまり複雑なので重複を嫌う国際規格機構が取上げなかった、あるいは、国内の問題に気をとられ過ぎ、申請が遅れたという説などがありますが、真偽のほどは分かりません。

国内事情に捉われて海外の動きに注意を払わなかった結果だといわれても仕方ないでしょう。しかし、このような国民性もこれからは若い世代に入り次第に薄れていくでしょう。

8. フェリカネットワークス社

2004年1月、ソニー、NTTドコモ、JR東日本3社の合弁会社として設立されました。設立目的は次ぎの3つです。

  1. おサイフケータイが提供するいろいろなサービスの領域管理
    Felica の記憶容量は有限です。特定のアプリケーションが勝手に増えてメモリーを占有してしまうことがないよう、サービス事業者と常に協議します。これが同社の最も大切な仕事です。
  2. システムのASP提供
    サイフケータイのFelicaチップが円滑に作動するよう手助けをする仕事です。
  3. Felicaの鍵管理
    Felicaへのアクセスには特別な鍵が必要です。同社は個々のサービス提供業者に代わってこの鍵を一括管理しています。要するに、おサイフケータイを作るのはNTTドコモとソニーの仕事、そしてその後、市場に出回ったこの商品をケアするのが、フェリカネットワークス社の仕事です。同社は。このような仕事をして収入を得ています。

9. おサイフケータイの利用はさらに伸びるか

現在市場に出回っているおサイフケータイの累計台数は1億8千万台です。それではその将来性は?という問題が出てきます。この問題を解く鍵は次ぎの4つでしょう。

  1. R/W端末の共通化の問題
    現時点では、おサイフケータイが提供するいろいろなサービスは、個別のサービスごとに合わせて作られたR/W端末によって実現されています。
    個々のサービスに対応する端末を備え付けるとすると、設置コストが嵩み、レジ回りのスペースが端末だらけとなります。加盟店は悲鳴を上げます。端末の共通化(万能端末の開発)が必要です。
  2. ユーザーの啓発・教育問題
    おサイフケータイは便利なものですが、利用者自身がこの機器を「得体の知れないサービス」を提供する馴染みの薄い携帯電話と受け取っているようです。利用者が自分自身で望むアプリケーションを設定するのに戸惑っているようです。スマホの急展開もライバルとなっているようです。
  3. サービス提供会社が支払う手数料問題
    フェリカネットワーク社がサービス提供会社から徴収する手数料が高すぎるという問題です。これはいずれは企業間の話し合いでいずれは解決されるでしょう。
  4. Felicaには、暗号領域と非暗号領域とがあります。極秘のデータは暗号領域の格納されます。FelicaのIdm(製造番号)は簡単に偽装されるので、ここから非暗号領域に納められているデータを盗み見る、改ざんすることが比較的容易にできると伝えられています。セキュリティ強化の問題です。速く改善されることが望まれます。




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