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銀行離れ

まえがき

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この原稿を書いている真っ最中の12月7日、朝日新聞の社説を読んで私はプット吹き出しました。「オレオレ詐欺まで銀行離れ」、「偽の電話をかけ共犯者が被害者の自宅まで出かけ直接現金を受け取る手口」、と書いてありました。

犯罪者までが銀行(ATM)から離れていくとは、世の中も変わってきました。話は変わりますが、ネーティブデジタリアンの皆さんも、夏目漱石の「吾輩は猫である」をお読みになったことがあるでしょう。

漱石が自宅に出入りする人々の人間模様を描いた長編小説です。この題名をちょっと拝借して「我輩は銀行である」と題し、最近銀行の周りに起こっているいろいろな事象をまとめてみました。

銀行については、前に「財閥と銀行」の項で2回にわたり詳しく書きました。読み直してみてください。とにかく、最近ところどころで生じている出来事は、今までどっしりと胡坐をかいてわが世の春を詠ってきた銀行にとっては余り愉快なことではないようです。

これらの出来事に対し銀行業界は遅ればせながら対策に乗り出したようです。発端はこれまで銀行の独占業務として誰も疑わなかった為替分野から始まりまり、やがてメディアから「銀行離れ」と呼ばれるようになりました。

1. 銀行離れとは

親離れ、乳離れ、肉離れなどの言葉はよく耳にします。2013年1月6日の日本経済新聞に「銀行離れ」が進んでいるという聞きなれない言葉が載りました。1970年後半から債務危機に苦しむ銀行が貸出しを渋る傾向が出始めました。

このため大企業は直接資本市場から必要資金を調達を拡大しました。金融には直接金融と間接金融とがあります。直接金融は銀行を通さずに資金を調達すること、間接金融は銀行から融資を受けることを意味します。

1980年代この直接金融の萌芽が現れ、2008年おリーマンショック以降、製造業の銀行依存度の低下すなわち直接金融の傾向が強くなってきました。これが銀行離れの始まりです。

戦後から一貫して銀行業界を支えてきた「間接金融」というビジネスモデルは1980年代から揺らぎ始めました。当時、銀行業の証券業界への本格的な進出は制度上認められていませんでした。

銀行は、企業の直接金融への傾斜と法制の枠組からの締め付けという両面から挟み撃ちにあった格好となり、さらに、この銀行離れの動きにIT革命に起因する銀行離れの波が押し寄せてきました。

決済分野における銀行の独壇場は過去のものとなりつつあります。難しい話はこの辺で止めます。このIT革命の具体的な小さな動きを中心にして考察を進めていきましょう。

2. 蟻の一穴

堅固に築き上げた堤でも、蟻が掘って開いた小さな穴が原因となって崩壊することを「蟻の一穴」といいます。この穴が最近いろいろな形で登場して来ました。銀行が嫌がる穴です。

この穴は、銀行がこれまで独占してきた銀行業務の一つ、為替業務(送金)の分野から登場してきました。せっせと働く蟻の正体はIT企業です。そして、この穴の進出を認めた法律が2008年に成立した資金決済法です。

3. 銀行

銀行というと私どもはすぐ、全銀協、メガバンク、地方銀行、ロビー活動、徳川幕府の御用商人、両替商、金貸しの親玉などを連想します。銀行法(1981年6月1日法代59号)は「銀行」を次のとおり定義しています(2条1項と2項)。

銀行とは内閣総理大臣の免許を受けて、つぎのいずれかを行うものをいう。

  1. 預金・定期預金の受け入れ
  2. 資金の貸付
  3. 手形の割引
  4. 為替取引

これら①~④までに業務を「銀行業務」と称します。総理大臣の免許を取らずにこの銀行業務を行ったものは罰せられます。例えばメディアがしばしば報道している地下銀行がその好例です。

4. 資金決済法

この法律は、前払い方式で商品券やプリペイドカードなどを発行する業者と送金を扱う資金移動業者の健全な発展と利用者の利益の保護を図ることを目的として、2008年に制定されました。銀行の専業であった送金・決済サービスを一般の事業会社が提供することを認めた法律です。

この法律と蟻の一穴とどんな関係があるの?と質問されそうです。この法律が定める「資金移動業者」が両者の接点になっています。

法律制定当時は、資金移動すなわち送金・決済業の種類は限られていると考えられていたようです。しかし、IT技術の発達により電磁的決済手段は飛躍的に普及してきました。電子決済ビジネスという新たな市場が登場しました。

私がいう蟻の働き場所が広範囲にわたってきたわけです。IT技術は身軽です。新しいことをドンドン考え出してすぐ実行に移します。消費者のニーズをすぐ掴み取ることができます。消費者のニーズに対応して送金・決済ができる時間帯を365日・24時間としたのもIT業者でした。

全銀協も最近これらの動きにようやく気付き、これではいかん、個人消費者のニーズがつかめなくなる、競争に負ける、と言ってやっと重い腰を上げたようですが、なにしろ図体が大きく小回りが利きません。24時間・365日の実現は2018年をメドとされています。

資金決済法がカバーする取引形態は、紙型のビール券や商品券など、IC型のEdy, SuicaやICOCAなど、そしてサーバ型のWebMoney, Bitcoin, アマゾンギフト券などの3つの分野です。

サーバ型について少し説明しておきます。 電子マネーには非接触式ICカード型とサーバ型という2つのタイプがあります。サーバ型はコンピュータ上でデジタルデータのみをヤリトリして決済を行うタイプです。

Bitcoin については最近メディアが大騒ぎしていました。これがサーバ型電子マネーの代表選手です。

5. 資金移動業

内閣総理大臣から免許を受ければ銀行以外の人でも、100万円相当額以下の為替取引を業として営むことをいいます。3つのタイプがあります。

  • 営業店型
    送金を希望する人がA営業店に行って現金を渡して送金を依頼する。A店は提携先のB店に送金情報を連絡する。受取人はB店に出かけてお金を受け取る形です。
  • インターネット・モバイル型
    送金を希望する人が資金移動者のウエブページにアカウントを開き、入金し、受取人のアカウントに送金した旨を伝える。受取人は指定されたアカウントからお金を受け取る形です。
  • カード・証書型
    海外渡航者はアカウントに入金してカードを作成し、このカードを持って旅行し、現地提携先のATMから現金を引き出す形です。

6. 小さな蟻の小さな穴の具体例

小さな、小さな穴と書きましたが、この穴は今は小さくても次第に大きくなる可能性を秘めています。将来性を秘めた働き蜂の動きを追ってみましょう。皆さんご存知のものもかなりあるはずです。

(1)プリペイドカード(プリカ
資金決済法では「前払い式支払手段」と呼ばれ、以下の4つの条件を満足したものに限られています。

  • 交通系。流通系の電子マネー
  • 商品等の数量を証票・ICチップ・コンピュータサーバーに記録すること。
  • 上記の数量に相当する対価が支払い済みであること。
  • 証票等に番号・記号・符号が記されていること。
  • 買物をするとき、上記の番号等が提示・交付・通知されること。

プリカは当初は、商品券、ビール券、テレホンカード、JRオレンジカードの形をとっていました。その後、通信技術の発達や利用者のニーズに応じて主として交通分野で発達してきました。新しいものを並べておきましょう。

  • ライフカードの日本初の「VISAバーチャルプリカ」
  • 三菱UFJニコスの「e-さいふ」
  • クレディセゾンの「ココカラファイン」

プリカは次ぎの利点を備えています。

1 小額の現金の代替が可能
2 端末レジでの処理スピードが速い
3 使い過ぎができない
4 ギフト券として利用可能

(2) ドコモケータイ払い
NTTドコモが提供する電話料金合算払い、ドコモ口座払い、クレジットカード払い、iDネット決済などの決済サービス。

(3) 地下銀行
銀行法4条の免許を取らず海外に送金する違法な送金機関です。主として来日した外国人が違法就業で得た金を母国に送る手助けをしています。日本では、1997年に初めて摘発されました。マネーロンダリングやテロ資金送付等に悪用されることがあります。

(4) ハワラ
中東から南アジアを中心とするイスラム社会に見られる送金システムで、証文を一切残さない信用取引を特徴としています。

(5) 未来バンク事業組合
市民から出資金を預かり、環境にやさしい商品を購入する人や環境にやさしい事業を営む人に低利%)で融資する民間の市民団体です。1994年に始まりました。

(6) 女性・市民コミュニティバンク
2010年ごろ登場しました。市民が出資したお金を基に地域社会や環境保全活動を行うNPOなどに融資する「市民のNPOバンク」です。銀行ではなく、貸金業として活躍しています。

(7) 市民ファンド
「志のあるお金の仲介者」と呼ばれています。市民から寄付を募り、地域で活躍するNPOや地域団体にお金を貸す民間団体です。

(8) コンビニ決済
ペーパーレスかつ前払い式の決済手段で、後払い式のクレジットカードとともによく利用されています。

(9) 現金渡し
配達先で現金と引き換えで商品を渡す方式です。くろねこで利用されています。

(10) auかんたん決済
KDDIが提供するスマートフォン向け決済サービス。

(11) 地域カード
小売大手や交通機関で利用されるクレジットカードや電子マネーの機能を持たせたカードで、地方自治体(盛岡市)が中心となって限定された地域で実用化されています。

12) 電子マネー
別項で詳しく書きます。

(13) PayPal
米国のPayPal Inc.は1998年、電子メールアカウントとインターネットを利用した決済サービスを提供する目的で設立されました。親会社は大手オークションサイトeBayです。

同社のサービスは米国を中心に世界中に普及しています。日本のユーザーの利便性向上を目的とした日本語表示が2007年に始まりました。

(14) Wallet
MasterCard加盟店で利用できる前払い式のかーどで、買物のたびごとにポイントが貯まります。貯まったポイントはカードにチャージされて次ぎの買物に使用できる仕組となっています。

コンビニ決済、形態キャリア決済、YAHOOウオレット決済などに利用されます。AUWALLETが代表的なものです。

(15) PointExchange
買物などで貯まる各種のポイントを一つにまとめ、現金や商品などに交換するサービスです。

(16) ビットコイン
別項で詳しく書きます。

(17) ペイジェント
2006年ディー・エヌ・エーと三菱UFJ銀行の合併企業として設立されました。インターネット・携帯電話上のクレジットカード決済、コンビニ決済等のマルチペイメント決済サービスを提供しています。

(18) イーコンテキスト
1994年に設立された㈱デジタルガレージ社が提供する決済を中心とするサービスです。最先端のインターネットビジネスも開拓しています。

(19) GMOペイメントゲートウエイ
電子商取引事業者に対しクレジットカード決済サービスを提供することを目的として1995年に設立されたネット上の株式会社です。

(20) ソフトバンクペイメントサービス
ソフトバンクグループ内のクレジットカード決済やコンビニ決済等を代行するサービスです。

(21) ベリトランス
米国の電子マネー開発会社サイバーキャッシュ社の子会社で、1997年に日本の株式会社として設立されました。サイバーコインやサイバーキャッシュという決済サービスを提供しています。

(22) Western Union

(23) シャドウバンク(影の銀行)
中国で急速に発達しています。「シャドウバンク」が、投資家やお金を運用したい人に銀行理財商品(中国で取引される高利回りの資産運用商品)や信託商品などを売ってお金を集め、このお金を社債、銀行引受手形などの形を通して企業に貸し付けています。

借りた企業が倒産すると影響が大きいので心配されていますが、急激に利用する人が増えているようです。

(24) 小売店、独自の電子マネー発行の動き

  • CGCグループ(スーパー共同仕入れ)・・・2015年春独自の電子マネーを発行予定
  • 北海道コープさっぽろ・・・ちょこっとカード
  • ドン・キホーテ・・・マジカ

(25) おサイフケータイ
別項で詳しく書きます。




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