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クレジットカードを規制する法律

1. まえがき

わが国には現在、クレジットカード取引を単独で規制する法律はありません。ケース・バイ・ケースで必要に応じていろいろな法律が適用されています。

ひところ、単独法制定の動きがありましたが立ち消えになったようです。このことは、クレジットカードが社会生活全般に広く広がり、これをまとめて単一の法律で規制することが立法技術的に難しいことを示しています。

クレジットカード取引に関連する法律は、最近メディアが囃し立てるアベノミクスの3本の矢ではありませんが、「割賦販売法」、金利を規制する「出資法」、悪質な資金業者を規制する「貸金業法」の3つの法律があります。

このうち、現時点でカード取引に関連する条文を一番多く有していいる割賦販売法がこの3本の矢の筆頭に挙げられています。この法律は、もともとは業界規制法でしたが、その後もろもろの事情から、消費者保護的色彩が濃い法律に様変わりしてきました割賦販売法の内容を調べてみましょう。

2. 割賦販売法

この法律は、全文55の条文からなっています。比較的短い法律だな、と考えがちですが、そうではありません。

施行された昭和36年から平成26年までの約50年間に、この法律はもぐら叩き並びに姉妹法である出資法の改正と平仄を合わせるため、通算41回の改正され、ことに同法第35条は、35条の二、35条の三の2・・・・・と枝分かれ重ねて、35条の三の62まで伸びています。

追加、修正が相次ぎ、伸びに伸びて全体では極めて長文の法律となっています。基本的な事項を定義する第2条すら変更されています。数年前の定義が最新版六法全書では変わっています。

数年前の解説書もすぐ時代遅れとなります。しかも使っている文章が難解です。例えば、「それを提示し若しくは通知して、又はそれと引き換えに、商品若しくは権利を購入し、又は有償で役務の提供を受けることができるカードその他の物又は番号、記号その他の符号」という文言があります(2条の二)。難しい表現ですが、クレジットカードを指しています。

この法律は1961年に施行されました。わが国でDiners Club が初めてクレジットカードを発行したのが1960年でした。

制定当時の割賦販売法にとっては、クレジットカードの概念は想定外のことで、突然押し寄せた津波みたいなものでした。にもかかわらずこの法律は次第にクレジットカードを取り締まる上で最も密接な地位にある法律と祭り上げられてしまいました。

なぜでしょう? それは、この法律が「分割払い」の決済方法を規制する法律であったから、また、同法がところどころにせよ、クレジットカードの原型に触れていたからです。

この法律の全体像を説明するには長い時間が必要です。そこで、焦点をクレジットカード関連の範囲のみに絞り込んでその大要をまとめてみましょう。

(1) 関連用語の説明

第2条(定義)に出てくる用語を簡単に説明しておきます。

  1. 割賦販売
    商品の購入と代金の支払いは、同時に行うことが原則とされています(民法第533条同時履行)。しかし、買主は今商品が欲しいが手元にはお金がないが数日後には必ず払える、一方売主は代金回収の見込めるならば売ってもよい、というケースが日常生活にはよくあります。
    このケースに対応して生まれたのが「後払い、分割払い」の知恵でした。割賦販売法では後払いを割賦販売と定義しています(2条1項の一)
    2つの定義があります。
    ・ 対価を2回以上の期間にわたり、かつ、3回以上に分割して受領することを条件として指定商品若しくは指定権利を販売し、又は指定役務を提供すること(2条1項の一)。
    ・ リボルビング払い…購入金額の多寡にかかあらず買主があらかじめ定められた条件に従って毎月一定額を返済する方式(2条1項の二)。
  2.  ローン提携販売
    売主が買主の保証人になることを条件に、銀行が買主に対し買物代金相当額を融資し、買主はこの融資金額で代金を一括払いし、その後、所定の利子をつけて銀行に融資金を分割して返済する方式です。(2条2項の一)。
  3. 包括信用購入あっせん
    現在のクレジットカード取引を指します(2条3項の一)。なお、3項の二はリボ払いを規制しています。
  4. 個別信用購入あっせん
    クレジットカードを使うことなく、信販会社が、商品購入者に代って立替払いをし、後日商品購入者から立て替えた金額を分割して返済してもらう方式です(2条4項)。
  5. 指定商品、指定権利、指定役務
    指定商品と指定役務は2008年の改正で削除されました(2条5項)。
  6. 前払い式割賦販売
    商品の引渡しに先立って、買主から支払われた分割金を売主がその都度受領する方式です。この方式では、代金を受領した売主が商品を引き渡さない危険があります。割賦販売法は、この危険を防ぐため、販売業者を許可制とし、一定の営業保証金を供託することを義務付け手ています(2条6項)。
  7. なお、「信用購入あっせん」という言葉が割賦販売法第三章にありますが、これは、前述した個品割賦購入あっせん(旧称、個別信用購入あっせん、2008年の改正で名称変更)と包括信用購入あっせん(旧称、総合割賦購入あっせん、2008年の改正で名称変更)の2つを指しています。

(2) 割賦販売法の性格

当初は、小売業者と割賦販売を行う事業者との間の取引秩序を図ることを目的とする業界規制法として誕生しましたが、その後、目的に「購入者等の利益の保護」を加え、「販売信用」に関する規定に重点を置く法律になってきました。

(3) 割賦販売法の改正

前述しましたとおり、割賦販売法は誕生以来40数回も改正されてきました。そのうち主な事項を時系列に沿って並べておきます。

  1. 1968年改正
    前払い式割賦販売の規制強化
  2. 1972年改正
    割賦販売にクーリングオフを導入
    ローン提携販売と前払い式特定取引を新たに規制対象とする
  3. 1984年改正
    割賦購入あっせんにクーリングオフを導入
    割賦購入あっせんに抗弁対抗規定を追加
    指定商品を大幅拡大
    リボルビング方式を導入
    個品割賦購入あっせんを規制対象とする
    過剰与信防止規定を新設
  4. 1988年改正
    クーリングオフ期間を7日間から8日間へ延長
  5. 2008年改正
    ・割賦の定義が見直されました。
    「2ヶ月以上かつ3回以上」の分割払いに加えて「2ヶ月以上後の1回払い、2回払い」を規制対象としました。これによりボーナス払いも規制対象となりましたが、包括信用購入あっせんの「翌月1回払い」(マンスリークリア)は単なる決済方式としての性格が強いとして規制対象から除外されました。
    ・指定商品・指定役務を廃止されました。
    ・不適正与信防止義務が導入され、過剰与信が禁止されました。
    ・過量販売解除が新設されました。
    ・個別信用購入あっせん契約にクーリングオフが導入されました。
    ・個別信用購入あっせん契約に取消規定が新設されました。
    ・個別クレジット業者を登録制とし、改善命令や立入り検査などの行政指導が強化されました。
    ・個別クレジット業者に訪問販売を行う加盟店の勧誘行為について調査義務が課されました。
    ・クレジット業者に対し、指定信用情報機関を利用した支払い能力調査義務が課されました。
  6. 2014年改正
    後払い分野における監督の基本方針を改定
    処分の審査基準を改正
    業務報告書の提出を義務付け

(4) クレジットカード関連の規正法の抜け穴

刑法の施行時においては、CD/TM犯罪やクレジットカードの磁気テープの盗み読みなどのカード犯罪は、いずれも想定外の犯罪で、捜査当局や学会はどのような罪名を適用すべきか頭を悩ましたと伝えられています。

蛇頭を中心とする大量の外国人犯罪者の密入国やクレジットカードの偽造も同様でした。刑法や関税法が改正されてこれらの犯罪に適切に対応できるまで、約5年間の空白期間が生じました。

外国人犯罪者は、この法的空白期間を見逃さず「法の抜け穴」と称し、日本に大挙押し寄せてきました。捕まっても軽い罪ですぐ釈放される、日本の牢屋はホテル並で居心地がよい、日本のポリスは決して拳銃を撃たない、強制送還されてもすぐ舞い戻れる、などと嘯いて彼らは好き勝手な悪事を繰り返えした時期がありました。現在は法の整備もほぼ整ってきて(もぐら叩きは依然として続いていますが)彼らの動きは押さえ込まれたようです。

4. クレジットカード取締法の変遷

クレジットカード犯罪発生の歩みと、これらの犯罪を誘引として行われた刑法等の改正や新しい規正法の制定の歩みを整理すると次のとおりとなります。

  1. 第1段階(1960年代、カード犯罪黎明期)
    犯罪形態は、カードを拾って使った、すられた、盗まれた、などシンプルなもので、対応する規正法も刑法など既存の法律で間に合っていました。
  2. 第2段階(1960年代後半~80年代、知能犯台頭期)
    CD/ATM犯罪が登場、磁気テープの窃取、改ざん、電子計算機の悪用、などの犯罪が散見され始めました。有線電気通信法の改正(1984年、9条、通信の秘密不可侵、13条、通信設備損壊妨害)ならびに刑法改正(1987年、161条の2、電磁的記録不正作出・共用、234条の2、電子計算機損壊等業務妨害、246条の2、電子計算機使用詐欺)のが行われました。
  3. 第3段階(1988年~1990年代、犯罪形態の複雑化、新法制定ラッシュ期)
    債権の悪質な取立て、個人信用情報法の窃取・横流し、カードで購入した商品の処分ヤミルートの登場、地下銀行、クレジットカードの国内での偽造、海外で偽造されたカードの国内持込、スキミング、ネット上のなりすましなどの悪役が舞台に登場してきました。
    この動きに対応して次のとおり、法律を改正したり、古い法律を探し出したり、新法を制定したり、関係省庁とくに法務省はてんてこ舞いさせられたと伝えれれています。
  4. 第4段階(2000年以降、IT技術を駆使する犯罪の多様化、取締が本格化した時期)
    海外で偽造されたクレジットカードの国内への持込、IT技術を悪用するコンピュータ不正アクセス、ネット上の不正行為、ネット通販トラブル、ネットバンキング不正引き出し、携帯電話の悪用、個人信用情報の漏洩など、犯罪が複雑・多様化し、これに対応して取締当局が、次に示すとおり、刑法等の抜本的改正と新法制定を武器に本格的取締に乗り出しました。もぐら叩き最盛期と言えましょう。

(5) クレジットカードに関係のある主要法令

5. 今後の法改正等の動きなど

マンスリークリア方式が規制対象外としているために、この方式を悪用したトラブルが急増しています。サクラサイト商法(注1)や情報商材(注2)においてマンスリークリア方式が多用され、また、加盟店調査義務を課されないクレジット業者や小規模店が取引内容を把握していないケースが急増していると伝えられています(日経26・9・18)。新たなモグラが後を絶ちません。
(注1) サクラを使って利用者から金銭を騙し取る悪質・違法な商法
(注2) ネット上で、ハウツーもの、株式売買正攻法、異性に持てる方法、競馬予想などの情報を売買する商法。悪質な情報が紛れ込み易く苦情が絶えない。

まえがきで触れましたように、カードを直接・間接的に規制する主な法律は3つあります。割賦販売法、金利を規制する出資法、貸し金業者のマナーを規制する貸金業法です。

割販法と出資法の説明は終わりました。次項で、貸金業法について勉強しましょう。もぐら叩きという言葉を私はなんべんも使いました。弱い立場にある消費者、借金に苦しむ多重債務者などをさらに苦しめる悪徳化資金業者=もぐらを取り締まる法律がどのような経緯で誕生したか調べてみましょう。




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