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提携カード
提携カードとは
広辞苑によれば、「提携」とは、「手を取り合って互いに助けること」と定義されています。カード業界では、「提携カード」はクレジットカード会社が他の企業や団体と提携して発行するクレジットカード」のことを言います。
提携カードに対して、「プロパーカード」という名称があります。これは、クレジットカード会社が単独で、自社のブランド・ロゴのみを付して発行するクレジットカードのことで、カードの初期時代では、クレジットカードと言えばプロパーカードを意味していました。
しかし、その後、提携カードが登場し、現在ではクレジットカードの主流は提携カードになっています。なお、国際ブランドカード会社のメンバー(国際ブランドカード会社と提携している)が自社のブランドと国際ブランドカード会社のロゴとを付して発行しているカードは、形式上では提携カードのようですが、提携カードとは呼ばれていません。
提携カードはなぜ誕生したのか
まず第一の理由としては、カード社会が成熟してきたことが挙げられなす。その基盤の上に立って、クレジットカード会社と提携先企業との間で、次のようないろいろな理由が絡み合い利害関係が一致した結果、提携カードが登場してきました。
- 自社の名前を付したクレジットカードを発行したいが、ノウハウがないので専門家に頼みたい。
- カード会員を広く集めて自社の顧客とすることができる。
- 提携先との間でカード会員の情報を共有できる。
- 異なる業態の加盟店を利用できる。
- カード関連業務費用、サービスやポイント関連のコストを削減できる。
- 顧客を囲い込むことが出来る。
- カード会員にとってもカード会社と提携先企業が提携することにより提供されるサービスの範囲が広がる。
提携カードの始まり
クレジットカード創生時代(1960~70年代)は、クレジットカード会社は勿論のこと、誰にも「他人と手を取り合ってカードを発行する」という考えはありませんでした。
日本における提携カードの第1号は、1968年、日本信販が松坂屋と組んで発行したカトレアカードでした。1986年、VISA international が日本信販に対し「Spesial Licensee」という特別な資格を与えVISAのメンバーにしました。
VISAは通常銀行系のクレジットカード会社のみをメンバーとして認め、VISAブランドのカードを発行する資格を与えることとしていますが、必要と認めると銀系以外のカード発行会社にもこの資格を与え発行権を付与します。
この資格を得たメンバーがSpesial Licenseeと称されています。日本信販、クレディセゾン、ダイエーOMCの3社がこの資格を与えられVISAのメンバーになりました。
この資格付与により、郵貯共用カード(日本信販郵便貯金ジョイントカード)はVISAブランドを掲げることができるようになりました。銀行系カード会社は、天敵である郵便局のクレジットカードが仲間に割り込んできたので、当時大騒ぎをしました。
郵貯提携カードの丸投げ方式
郵政省は、この郵貯提携カードを発行するに当たり、提携先の日本信販にカード業務のすべてを任せました。カード業務にはカードの発行、加盟店の開拓、加盟店管理、カード会員の審査・獲得、カードのセキュリティなど難しい仕事が沢山あります。
普通、Aというクレジットカード会社とBという企業が提携してカードを発行しようとする場合、AとBとは、この仕事はAが行う、この仕事はBが担当すると、細かく業務の分担を決めます。郵政省は、自身でカード業務を行うことはせず、一切の仕事を日本信販に任せました。
「よきに計らえ」というスタンスです。これを業界用語で「丸投げ方式」といいます。一切を任された日本信販は自由に腕を振るうことができました。
幕末の雄藩長州の殿様、毛利元就はいろいろと進言する家老たち、草莽の志士たちにただ一言「そうせい」と頷いたそうです。そのため「そうせい公」とあだ名が奉られました。元就と郵政省、どこか似ているようですね。
国際カードビジネス協会
1988年、日本信販は、クレジットカードの内容、カードを用いた決済の将来性を普及するための勉強会の場として、国際カードビジネス協会を設立し、百貨店、メーカー、専門店、金融、保険、サービス業など数10社を招聘しました。
事務局は日本信販に置かれました。設立当時、VISAカードを発行できるのはVISAインターやビザジャパンに加盟を認められた銀行系クレジットカード会社だけであり、信販系や流通系のカード会社はVISAカードを発行することは出来ませんでした。
VISA のメンバーとなった日本信販は、自社が有する国際ブランドの発行権をこの協会を通じてICBAの参加各社に付与しました。
同協会が提携カードの普及・発展ならびに加盟店の開放にに大きく寄与した功績は計り知れないものがあります。同協会は2010年、使命を終え解散しました。
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