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Ⅱ 信用照会端末とCAFIS
どの業界においても、業者間には熾烈なシェア争いが繰り広げられています。カード業界も決して例外ではありません。「個々の利害関係による対立」と言えるでしょう。
信用照会 端末やそれを結ぶ回線の規格をどのように決めるか、を相談する場でも、この対立がカード 会社間の猛烈な加盟店獲得競争という形で現れたとのも当然のことでした。1993年~95年における3年間は、カード業界に劇的な変化をもたらしました。
- G-CATの本格的稼動
- CCT端末の登場
- 売上伝票の一括保管センターの設立
- オーソリ限度の引下げ
- 端末。ネットワークの自由化
など、すべてがこの期間に生まれました。業界にとっては忘れられない期間というべきでしょう。以下、これらの出来事のうち、端末と回線の動きに焦点を当てて説明しましょう。
1. CAFIS回線
現在、日本国内を縦横無尽に張り巡らされているクレジットカード用の回線(電線)は、次のとおりです。
- 国際線
VISA Worldwide のBASE ⅠとBASE Ⅱ
MasterCard WorldwideのBANKNET
VISA ならびにMasterCardが構築・運営している
国際的なオーソリゼーション・ネットワーク - 国内線
CAFIS Credit and Finnce Information Switching System
NTTデータ(旧日本電電公社)が運営する回線
G-P Net Grobal Payment Network
㈱ジーシービーが運営する回線。
国内に設置された信用照会端末SG―Tを使い加盟店とカード会社間を接続し、
オーソリゼーションやギフトカードのサービス等を提供。
CARDNET
JCBが中心となって設立した㈱日本カードネットワークが運営する回線。
オーソリゼーションのスイッチングサービス、売上データの作成、
カードの有効性のチェック、無効カードの受信サービス、加盟店の決済業務支援等の
サービスを提供。JTBグループ販売店、ホテル、旅館等を結ぶ回線。
2. CAFIS と CANNETの覇権争い
- 1981年、銀行系カード会社6社(翌年AMEXが参加して7社となる)は日本電電公社とオムロン社をオブザーバーとして、CATを全国的に展開するための勉強会「クレジットカード・オンライン端末開発委員会」を設立、1983年6月に、「CATS事務局」を立ち上げました。
- 同年、この動きを察知していた通産省は、信販協、日専連、日商連に働きかけて、1982年、「産業システム推進協議会」を創設、「CAT懇談会」がスタートしました。
- CATS事務局とCAT懇談会においては、いろいろな論議が交わされるうちに、一時、「ネットワークの分裂を避け統一された社会システムによるカード業界を作り上げることを考えたほうがよいのでは」という 意見もでましたが、この全国的統一構想は、結局は個々のカード会社の利害対立に翻弄され仙台や札幌など地方の大都市から反対の声が高まり、失敗に終わりました
- 1981年~84年にかけて、CATS事務局グループとCAT懇談会グループとの間で
激烈な主導権争いが発生しました。電電公社とIBMとの間の主権争奪の争いで、メディアはこれを「CAFIS vs CANNET覇権争い」と称して大きく報道しました。この関が原合戦は、加盟店獲得競争に敗れた日本IBMが撤退し、最後に電電公社のCAFISが勝ち残りました。 - 1985年、公衆電気通信法が電気通信事業法に改正されました。これにより、電電公社による独占体制が崩れて民営化が進み、電気通信事業への新規参入と電話機や回線利用端末の自由化が実現しました。
3. VISA international の申し入れ
1994年、VISA international は突然、日本のカード業界に対し「端末の自由化、情報センターの自由化、VISAのO-CAPセンターへの接続」をCATS事務局へ申し込んできました。
要するに「国際規格を無視しないように」という申し入れでした。CATS事務局グループは、このVISAの申し入れを受け入れ、次ぎの3点を考慮することを約しました。
- 国際ネットワークとの互換性の実現する。
国内回線をO-CAPセンターに接続する。 - それぞれの回線に接続する端末の名称を区別する。
現行のCATと区別して新端末の名称をCCTとする。 - CC手順(国際規格に沿った手順)を作成する。
このCC手順は結局日本側の標準プロトコルになり得ず、不発に終わりました。
この約束がその後実を結び、現在の国の内外を縦横に走る回線とCCT新端末の全国的展開の実現に結びついていくこととなります。
4. 信用照会端末
次に、この回線に接続されて全国のクレジットカード加盟店のレジに並ぶ信用照会端末の説明に進みましょう。現在、店頭のレジで活躍している主な端末機は、次のとおりです。
いろいろなメーカーが入り乱れており、とくに新規進出社は、「他社の端末はすでに生産を中止している」と称して自社の売込みを図っているものもあります。
しかし、生産中止と言っても現在全国に展開されて稼働中の端末がいきなり消えてなくなるわけではありません。当分の間は、これらの機種も活躍していくでしょう。
(1) CATグループ
CATは1983年い初めて登場しました。その後、次々と新型のCATが登場しました。
- 旧型CAT
標準CAT Card Authorization Terminal 。 旧型CATとも呼ばれる。日本独自の規格を持つ。CAFISを経由してカード会社へオンラインで問合せを行いカード会社からの応答を印字する。伝票作成機能はない。 - S-CAT
信用照会のみを行うシンプルな機能で印字機能がない。カード会社からの承認番号はディスプレイに表示される - G-CAT
1993年に仙台と札幌において初めて登場。認証と同時に売上決済処理が可能な端末。ICカードの読み取り機能はまだありません。
(2) CCTグループ
前述したVISA international からの申し入れと電気通信事業法の施行がきっかけとなりCAFISに対抗する形で数多くの新しい端末が登場しています。
2002年以降に登場した端末にはICカード対応機能を備えてたものが主流になってきました。主なものをリストアップしておきます。
- INFOX
NTTデータが運営する独自回線INFOX-Netに接続する端末。1999年サービス開始。VJAグループの加盟店に設置されている。ほとんどの電子マネーにも対応可能。 - SG-T
VISA系列の端末でSGターミナルとも寄れている。機能はCATと同じで経由する回線が違うだけである。 - JET―ALONE
CAFIS以外の決済端末回線に接続されたオフライン信用照会端末。将来的には、オンライン端末に切り替えられる予定。 - BIT
同上 - JET-S
日本カードネットワーク社が運営するCARDNETに接続する端末。日本カードネット社をアクワイアラとする加盟店、ロイヤルホールディングスの店舗、佐川フィナンシャルグループの加盟店に設置されている。QUICPayやnanacoに対応可能。 - MASTER-T
MaasterCard系列の信用照会端末。機能はCATと同じで経由する回線
が異なるだけです。 - C-REX
JTBが運営する独自のネットワークCARDNETに接続する端末。JTBグループ販売店、全国旅館生活衛生同業組合連合会加盟のホテル、旅館等の端末として使用されている。 - CREPICO
セイコーインスツル社の子会社エスアイアイ・データサービスが運営する独自回線に接続している端末。東京の大手タクシー4会社・飛鳥交通グループのタクシーを中心に使用されている。タクシー運賃が端末に自動的に打ち込まれる仕組。 - ASCAM
2006年、アスキーソリューションが開発した、商品の配達先で決済・領収書を発行するオフライン端末 - View/Suica
ショッピングサービス決済端末 - POS
スーパーなどで使用されているPOSシステムにCATの機能を加えた端末です。POSは「販売時点情報管理」という意味です。販売データ集計機能、売上データ処理機能、ポイント集計機能等を備え、スーパーやコンビニ等で使用されています。POSは1897年米国オハイオ州で初めて登場しました。わが国においては、1906年、三越百貨店が輸入したPOSが第1号機と言われていまです。
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