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公開日: : 最終更新日:2016/08/17
今さら聞けない 「カードって、何?」 (前編)
半世紀近くクレレジットカード一筋に関わってきた“カード馬鹿”が、その歴史と仕組み、賢い使い方を分かりやすくご指南します。
カード研究家 小河俊紀
はじめに
皆さん、初めまして! カード研究家の小河です。このコラムでは、読者の皆様が今まで耳にしなかった切り口の“カードあれこれ”を2回に分けて語ります。
前編では「クレジットカードの基本構造、メリット」をご説明し、後編では今秋から来年いかけて大ブレイクしそうな「ブランド・デビットカード」「ブランド・プリペイドカード」の特徴と使い分けについてお話します。キャッシュレス時代のトレンドを分かりやすくお伝えするつもりです。キャッシュレスを本当に理解すると、あなたの人生が便利で楽しく変わるかも!
日本のカード史
最近は、クレジットカードのサービスやポイントの比較サイトが花盛りですが、実は、「クレジットカードの基本実務を踏まえた消費者向け手引書」は、ほとんど実在しないのです!
日本でカードが発行されて54年。発行枚数が3億2千万枚(成人一人当たり3.1枚)を超え、年間利用額が53兆円を超えた(日本クレジット協会)のに、です。
カードがトランプと間違われた時代から42年間この業界に携わり、別名“カード馬鹿”というニックネームをもらっている者として、本当に残念なことです。ですから、このコラムが皆様のカード理解を少しでも深めることができたら幸いです。
ところで、小切手の代替ツールとして、どこでも使える機能を装備したクレジットカードが誕生したのは、米国の「ダイナースクラブカード」が最初と言われています。
1950年のことでした。日本には、10年後の1960年末に導入され、日本ダイナースクラブとJCBが発足しました。小切手習慣のない日本で、その後独自の進化を遂げました。
たとえば、米国では一種の分割払いであるリボルビング払いが普通なのに、日本では各種規制があって1回払い(マンスリークリアー)が定着しました。また、米国より銀行の口座振替制度が進んでいたため、日本では自動振替が一般的な返済方法です。
また、1970年代から登場したオフィス・コンピュータにより、会員データ、加盟店データ、売上データ等の処理が電子化され、電子マネー的な色彩を帯び始めました。
私の印象では、そのころから業界全体にセカンドギアが入り、“アメーバーのように無定形で、かつ高速度の増殖”が始まりました。汎用ギフトカードやカードポイントなどは、1980~81年にかけてJCBが開発し、日本文化全体に大きな影響を与えました。
カード会社の社員でありながら何が起き始めているのか、どこへ向かっていくのか、若い私にはよく理解できなかったことを覚えています。
ただでさえ、当時の日本は(特に、地方では)極度の現金社会で、“カード会社は他人の利益をかすめ取る怪しい金融ブローカー業”程度にしか認識されていませんでした。
「せっかく大学を出て、どうしてそのような会社に就職したのか」と、故郷の友人や親戚の集まりで皮肉られても、簡潔に説明できず肩身の狭い思いをしたものです。
それでも、日本経済の成長に呼応し猛スピードで進化してきたものですから、カードに関する本質的・多角的・学術的研究が当事者も行政側も追いつかず、消費者の皆様への正しい啓蒙ができないまま今日に至っています。
車社会との比較
生活を便利にしたツールの代表選手と言えば、「車」があります。ここ100年でここまで浸透したのは、業界の技術革新はもちろん、国家が「運転免許制度」を法制化し、国民の教育と道路環境の整備を長い時間かけて進めてきたからです。そうでなければ、人命を損なう“走る凶器”として葬り去られていたかもしれません。
カードは車と同様に便利です。潜在的に“パワフルで、深くて、広い”可能性を秘めています。ITと相乗するとビッグデータです。単なる決済ツールではありません。
しかし、欧米との政治・文化の違いもあって国から保護されることもなく、米国のように小中学校の必修科目にも入っていません。それどころか、発生確率の低い第三者悪用や破産に関するニュースだけが興味本位で大きく報じられることが多く、マイナスイメージが一人歩きしてきました。現金主義で育ったお年寄りだけでなく、次世代を担う20代の若者でも「カードは怖い」という思い込みが根強いそうで、誠に寂しいことです。
それが理由のすべてではないでしょうが、他の世代より突出してカード保有率が低いのが気になります。
※JCB資料「クレジットカードに関する総合調査」2013年版https://www.jcbcorporate.com/news/channelfile/file/report2013.pdf
ちなみに、2010年時点で個人消費に対するカード利用率(デビットカード含むキャッシュレス率)でみると、日本はわずか12%程度に過ぎず、欧米はもちろん、お隣韓国に比べても日本は超現金大国=カード後進国です。(下図参照)
※(株)フェアカード 資料:https://www.faircard.co.jp/market/
2020年に東京でオリンピックが開催されると、カードに慣れた外国人がたくさん来日します。彼らは日本中を旅し、どこでもカードを気楽に提示するはずですが、今のような状況では、世界の恥さらしになるような予感がします。前回1964年の東京オリンピック開催時とは、時代がまるで変っているのです。
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