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カードバカ連載 カードあれこれ 第19回 「キャッシュレスとカードレス」 

半世紀近くクレレジットカード一筋に関わってきた“カードバカ”が、カードに関するあれこれを、独自の切り口で語ります。

カード研究家 小河俊紀

皆さん、こんにちは。カード研究家の小河です。

前回は、7月に亡くなった長兄との思い出話を書きました。きわめて個人的な話題であるにも拘わらず、数名の知人から心の籠った追悼の言葉をいただき、本当に感謝しています。

中でも、ご自身のブログに追悼のコラムを作成され、お知り合いの110名もの方々に広く同報していただいた方がいて、胸に沁みました。

先週故郷の富山で「50日祭」(仏教でいう49日)の法要と納骨式があり、兄の墓前にこの件を報告いたしました。

なぜか、それまでひとしきり降っていた雨がピタリと止み、法要の終了を待って再び激しく降り始めました。おそらく、兄は心から喜んでくれたのだと思います。

ところで、今回の連載本文を展開する前に、一言だけ前回原稿の内容について、お詫びかたがた若干補足修正させていただきます。

私を面接し、採用いただいたJ社社長

1972年(昭和47年)、大学卒業後入門した能楽師の世界をわずか3ケ月で断念し、長兄の勧めで東京のJ社の中途採用に応募したのが同年6月末でした。

傷心を抱えながら上京し、面接にいきなり出てこられた当時のT社長のことについて、前回触れました。

その方が、「小河君、いずれ当社は必ず世界に雄飛する」と語られたときに、正直「この人は、ホラ吹きか」と思いました。

当時日本国内でもほとんど無名なJ社でしたから、何も知らない青二才の私が早合点したのも無理はなかったのです。

しかし、T社長は、その後草創期のカード業界全体を俯瞰しながら一貫して多大な経営努力を尽くされ、同社の世界雄飛の足掛かりを構築されました。

言行一致、実に緻密で豪放な名社長でした。事あるごとに、「早く一流企業になって、世界の街角にわが社のロゴステッカーを貼ろう!」と社員を鼓舞されていました。私自身も入社3年を過ぎるころから本気になって働き始めたのを覚えています。

名経営者とは、物凄い夢の実現のため社員の心をひとつにする人間力抜群の人だと、その時私は知りました。

42歳にして、ワガママな自己都合で同社に中途退職の辞表を出したとき、すでに社長から相談役に退かれていましたが、突然相談役室に呼ばれ、「本気か?」と、約1時間近く私の気持ちを聞かれ、思い直すよう説得いただきました。

入社面接以降、何かと気にかけていただいていたようでした。本当に、温かい方でした。

今はお亡くなりになられていますので、この場を借りて、あらためて心から遺徳を忍びたいと思います。

さて、キャッシュレスの進展で、最近思わぬ日常に出会うことが増えてきました。今回は、キャッシュレスとカードレスについて、逸話を交え書いてみます。

事例1)ゴルフ練習場での失策

私は、ゴルフ歴40年になりますが、いつまで経ってもスコアが100を切るか切らないかの下手ゴルファーです。

もっとも、コースは半年に一回行く程度なので、上手くなるわけがありません。

それでも、「爽快感を手軽に味わう」ため月数回は打ちっぱなし練習場に出かけます。

以前は、全天候型の屋内練習場に行っていましたが、昨年から屋根もネットの囲みもない屋外練習場に通っています。荒天ではさすがに辛いものの、晴天の青空をスカンと飛ばす爽快感は格別です。

しかし、この練習場でゴルフボール自動販売機使用の際、累計4回も情けない失策をしました。

専用カゴを前に置いて、無記名のラミネート製ポイントカードと千円札を入れると150球出てくるのですが、ポイントカードを最後に抜き取るのを時々忘れてしまうのです。

打席に入り、カードを忘れたことに気づいてあわてて販売機に戻っても、大体はすでになくなっています。

このポイントカードは、利用ごとにデータ更新され、10回分ポイントが貯まるとその次一回だけ無料になる仕組みです。

データ書き換え作業は、10秒くらい全くの無音で行われます。銀行やコンビニのATMでも処理が遅い場合はありますが、だいたいは機械が動く音がし、終了すると何かしらの音声メッセージがあるので、置き忘れたことはありません。

自分のウッカリを機械のせいにするのも情けない話ですが、無記名方式で1ポイントが100円の価値をもつためか、発見者が練習場事務所に届けることは稀です。

9ポイントまで貯まっていた時に紛失した時の悔しさは、コースでOBを打った時と同じでくらいです。結局、4回のうち1回だけ手元に戻りましたが、それは従業員が見つけてくれた時だけでした。

事例2)近所のスーパーでのエピソード

今度は、私の失敗談ではありません。近所のスーパーマーケットでは、昨年から自動レジが設置されました。

自動といっても、バーコードの読み込み作業は店員が行い、精算だけ隣の自動精算機で客自身が行う半自動です。

支払いは、現金か、接触タイプのICカードです。私が買い物をする場合はだいたいが少額なので、現金精算します。

ところが、先日は私の二人先の客が精算機からカードを抜き取り忘れ、次の客が発見したものの、当の本人はすでに店を出た後でした。

レジ店員はあわててサービスカウンターのスタッフを呼び、カードを手渡しながら状況を説明しています。その間、レジは休止です。

「こういう事があるのですか?」

と私が聞くと、

「よくあるんですよ」

との答え。

本人から申し出でがくるまで、しばらく店の金庫で保管するそうです。

店側も気持ちが悪いでしょうね。

実際、妻の友人もその店で買い物し、帰宅後にどこで失くしたかわからないので、大騒ぎになったそうです。レジの合理化策が逆行しているケースです。

事例3)ビジネスホテルでの失策と、不快経験

私は、地方への出張や小旅行があるとき、駅前のビジネスホテルを結構使います。最近のビジネスホテルは禁煙ルームも多く清潔で、朝食付きで値段がリーズナブルです。

半年ほど前、大手TYホテルの足利店でIDカードをフロントで勧められ、気楽に入会しました。入会金は500円ですが、入会審査もなく、入会当日から会員価格の適用で結構お得感がありました。

その後、北陸方面の店舗でそのホテルを利用しました。予めネットのマイページで予約し、確認メールも送られてきました。

当日は荷物を預けるため予定より早い午後二時にホテルに出向き、フロントに予約確認メールのコピーを提示しました。

「確かに承っております。お客様、ところで会員証カードを見せてください」

「あっ!忘れてきた。サイフをいつものと入れ替えたからだ。」

「それでは会員と見做せませんので、一般料金でお支払いください。」

とフロントに冷たく明言され、仕方なく一般料金で前払いしました。

それから用事を済ませ、1時間後の午後3時にチェックインのためにフロントに行くと、

「今準備中ですので、しばらくしてから来てください。」

普通のホテルは、午後三時から無条件にチェックインできるけど、このホテルは厳格に運用しているのかもしれない。

事前の予約タイムより早い到着だったので仕方ないな、と思い直し、ホテル周辺の飲食店を探すも、喫茶店以外空いている店はなく、どこも“準備中”。

しかたなく、ウロウロと周辺を1時間近く徘徊するはめに。

午後四時近くなり疲れたので、

「さすがにもういいだろう。」

と念のため電話確認したら、

「午後三時からチェックインできるのは会員だけです。お客様はビジターですので、午後4時を過ぎないとチェックインできません。」

さすがに、これには私も切れた。

「会員番号がハッキリしていて、予約票と免許証を提示しても、IDカードがないとまったく会員扱いしないというのは、ヒトよりカードを信用している本末転倒の話だ! 役所や警察ならまだしも、無形のサービスが生命のホテル業なら、もう少し臨機応変の対処はできないのですか!」

副支配人は、

「どなたにも同じ扱いをしています。もし、不快な思いをされたなら、申し訳ありません」

と繰り返すだけで、極めて形式的で上の空だった。

悔しさもあって、いろいろ調べたところ、JAFのデジタル会員証のように、スマホにダウンロードして使えるデジタル会員証の仕組みがこのホテルグループに存在することを発見。

会員番号が分かっているので、さっそくダウンロードして、再度フロントへ提示したら、

「へえー、こういう仕組みがあったのは知りませんでした。」

と悪びれた態度もなく、精算機器を点検後事務的に会員料金で再精算。

私の不注意で起こったとはいえ、あまりにも心が通っていない応対を受け、

「このホテル全体の体質かどうか不明だが、この店舗はもう二度と使わない。」

と決意したのは言うまでもありません。

キャッシュレスは、カードレスが課題

今まで書いた事例は、「カードによる合理化は、細かい顧客心理も配慮しないと裏目に出る」典型的なパターンです。

とりわけ、少子高齢化が進むと、こういう思わぬトラブルが増えてくることでしょう。

紙幣や貨幣というモノが、カードというモノに置き換わるだけのキャッシュレスでは、どこか限界があるのではないでしょうか。下手すると、弾力性がないだけ温かみが損なわれ、逆行する可能性さえあります。

少なくても、音声サポートシステムはじめ、諸外国のように非接触タイプICカードへの切り替えが重要ではないでしょうか。

また、本人確認に関しては、前記ホテル事例のようなバカバカしいトラブルを防ぐためにも、「生体認証などヒトそのものの認証技術の普及を加速してほしい」と願うカードバカの私です。




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