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公開日: : 最終更新日:2017/10/13
カードバカ連載 カードあれこれ 第16回「カードの本質と、ビジネスマッチングと、天啓」(後編)
半世紀近くクレレジットカード一筋に関わってきた“カードバカ”が、カードに関するあれこれを、独自の切り口で語ります。
カード研究家 小河俊紀
皆さん、こんにちは。カード研究家の小河です。
はじめに
16回目の前編は、私が還暦を節目に「顧問」という職業に出会うまでを書きました。
こういう回顧録は、普通は功成り名遂げた有名人が書くのが一般的で、私のような市井の爺さんが書くのは僭越です。単なる苦労話・自慢話に聞こえることもありえます。大変、勇気が要りました。
その後、「元気をもらった」「カードが好きになった」という返信メールを、数名の現役バリバリの若い方からいただき、安堵しています。
とりあえず意を強くして、後編を書きます。出会いの(4)からです。
4)ハローワークで教わった人材会社からオファーがきた!
60歳目前に失業した私は、春日部のハローワークの担当官から教えられた人材登録サイトを即日開き、私の個人情報、履歴、特技等を入力しました。
正直、「半年後に何か反応があれば好運」と思っていたのですが、登録からちょうど1ケ月後に、赤坂の某人材会社から電話がかかってきました。
「ファイナンス関係の専門家を監査役として探している企業がありまして、面談をお願いできませんか?」。
「監査役? 私は監査の経験はありませんが。」
「ファイナンスの経験があれば、大丈夫です」
ということで、その1週間後にその企業社長と面談。
いきなり高額報酬の非常勤顧問
その日、赤坂の人材会社の社長さんと待ち合わせ、同じ赤坂にあるその企業を訪れました。恰幅の良い社長さんが現れ、テンポよく面談が進む中、突然
「小河さんは、監査役ではなく、営業面で支援いただく顧問ではいかがでしょうか。」と思いがけない任務提示を受けました。
顧問といえば、大企業の経営陣を務めあげた方に終身に渡って与えられる勲章のような肩書、と思い込んでいた私は、一瞬戸惑いました。
「当社は、年商180億円の中堅商社です。全国ギフトショップへの総合卸をやっていますが、このままではいずれ頭打ちになるので、B2C市場にも進出したいのです。
小河さんの知恵と人脈で活路を開いてください。」と。この企業こそ、連載15回目に登場したギフト商社です。
私は、失業保険をかなり上回る月額報酬で、2007年3月からこの企業の非常勤顧問になりました。週2回程度の出勤でしたから、大変ありがたい待遇となったのです。
スリリングな1年
任務に就いて程なく、実はそれほどノンビリできる立場ではないことに気づきました。外部から入る顧問とは、具体的な成果を出すべき専門職であると。
それでも、私は新規市場開拓が得意分野でしたから、それほど苦痛なく新しい仕事に馴染みました。最大の成果は、サーバー管理型プリペイドギフトカード市場に最小の投資で参入できたことでした。
私の人脈で、有名大企業が名を連ねるギフトカードプロジェクトの主役に顧問先が抜擢されたのです。これにより、同社は後日一般消費者とネットで繋がる道が開けたそうです。
再度の失業
この予想外の成果に、私には気の緩み(自己過信)が起きたかもしれません。
2008年3月の契約更新に際し社長と意見が噛み合わなくなり、この2月末をもって顧問契約は終了し、再度失業しました。
意気消沈と開業決意
その失業日である2008年2月28日(水)の夜、私はヤケ酒を大量に飲んで帰宅しました。
玄関で意識が遠のき、迎えにきた愛犬モモ(柴犬)を抱きながらそのままぶっ倒れて寝てしまったそうです。
翌朝、物凄い二日酔いと自己嫌悪に陥りながら 今後の生活を考えました。
「顧問という仕事は面白い。クセになりそうだ。しかし、サラリーマン気分の顧問ではいけない。自分の責任で開業しよう!」
1週間後の3月7日に、私は開業届を出しました。カネも、専用事務所も、国家資格もない経営コンサルタントの船出でした。
商号は、「カードで世界を拓く」という意味で、「カードシーク」としました。
既に取得していた ビジネスモデル特許が実用化すれば、ホラでもないとの意味も込めて。
熟年起業は、甘くなかった
意気込んで開業したものの、顧客(クライアント)が一社もなく売上ゼロの日が長く続きました。
直接・間接の人脈で、保有特許の売り込みをかけたものの、まったく相手にしてもらえません。
既に、失業保険受給の権利を喪失していましたので、老後の貯蓄を取り崩し活動資金、生活費に充てました。
ちょうどこのころ、自動車の買い替えや自宅のリフォーム時期が重なり、貯金がみるみる減っていく様は、背筋が寒くなるような怖さでした。それは、社会人になって初めての体験でもありました。
起業半年後ころ、思い余って自営業をされている近所の知人に相談すると、「足元をしっかり見つめ直した方がいい!」との厳しい指摘。
すがるような思いで開始したのが、簿記の勉強とカード専門誌への連載投稿。
簿記は、2級をもつ妻からの勧めでした。会計のイロハを学ぶ目的でした。事業経営を行うには、損益計算書と貸借対照表を正確に読めることが必須です。税理士に実際の決算手続を依頼するにしても重要です。
それまで、サラリーマンの仕事を通じて斜め読み程度はできましたが、「仕訳の基礎」も理解していない会計の素人でした。簿記教室で若い世代と肩を並べて学び、7ケ月近くかけてやっと3級を取得できた時、本当に飛び上がりそうな感動でした。
カード専門誌連載は、この年2008年9月から執筆開始し、11月号から翌年2009年12月号まで13回掲載されました。
題名は「カード馬鹿 向こう桟敷の独り言」。それまでのカード人生を短編・各回完結で書きました。
有名ライターでもないので、原稿料はわずかでした。
しかし、それでもこの原稿料が唯一の事業収入。結果、2008年度の総売上は二ケタ(万円)でした。開業時に契約した税理士に、年明け早々確定申告をお願いしたところ、「小河さん、これは何かの間違いではないですか。事業になっていませんよ!
かわいそうだから、手数料は格安にしてあげます。」。
今だから笑って言えますが、「もう、廃業しよう」と、真剣に思い詰めたのがこのころでした。創業から約1年経っていました。
しかし、世の中は不思議です。
細々と続けていた連載執筆が、土壇場で私の起業を花開かせる伏線になったのです。
5)エポスカードとの出会い
2009年初夏のある日、聞き覚えのない声の男性から突然電話が架かってきました。
「エポスカードのTと申します。小河さんに当社のアドバイザーになっていただきたいのですが。」
「えっ!? どうしてですか」
「当社事業責任者が、今書いておられる連載を非常に評価しております。
小河さんの経験と人脈をもって、当社カードの推進をお手伝いいただければ」
と。日本で最も伝統あるカード会社であるエポスカードから、アドバイザーのオファーをいただくとは、まったくの予想外でした。
正に、「捨てる神あれば、拾う神あり」。
エポスカードとは、この年の7月から今に至るまで、8年間も誠実で暖かいお付き合いをいただいています。
この第1号契約を節目に起死回生、クライアントが徐々に増えはじめ、顧問稼業に勢いがついて来ました。福の神エポスカードに心から感謝です。
ここ数年、起業を目指す、もしくは起業したての若い世代の方に、私はこの体験をよく話します。
「自分ができることをコツコツと、地道に積み上げていくと、 どこかで誰かが見ていてくれるものです。」と。
6)顧問名鑑との出会い
上記の写真は、2009年12月から2011年春にかけて、日本経済新聞本紙や日経ビジネスに数多く掲載された「顧問名鑑」の広告です。他有名企業の蒼々たる方々に交じり、僭越ながら私も賛助出演しました。
その他、テレビ東京でも、私が賛助出演したスポット広告が年末に集中的に放映された時期があります。(下記は、その放映時間帯と回数)
<「顧問名鑑」 テレビCM放映時間帯>
テレビ東京>> *( )内は放映回数
■2009年12月21日(月)
- 5:45~6:40 「モーニングサテライト」(2回)
- 13:25~13:30 「午後のロードショー」の前(1回)
- 16:52~17:20 「NEWS FINE(2部)」(1回)
- 20:00~20:54 「伝説の刑事」(1回)
- 22:54~23:00 「ワールドビジネスサテライト」の前(1回)
■同年 12月22日(火)
- 5:40~5:45 「モーニングサテライト」の前(1回)
- 13:30~15:30 「午後のロードショー」(2回)
■同年 12月23日(水)
- 5:45~6:00 「モーニングサテライト」(1回)
- 13:30~15:30 「ドキュメンタリー 秘境シリーズ」(2回)
- 16:52~17:20 「NEWS FINE(2部)」(1回)
- 22:54~23:00 「ワールドビジネスサテライト」の前(1回)
■同年 12月24日(木)
- 5:40~5:45 「モーニングサテライト」の前(1回)
- 13:30~15:30 「午後のロードショー」(1回)
■同年 12月25日(金)
- 5:40~5:45 「モーニングサテライト」の前(1回)
- 6:00~6:40 「モーニングサテライト」(1回)
- 10:55~11:00 「E morning(3部)」の前(1回)
- 23:58~24:53 「バラエティ7」(1回)
■同年 12月26日(土)
- 6:15~6:30 「Eネ!」(1回)
- 14:58~16:00 「ウィニング競馬」(1回)
- 24:55~26:40 「バラエティ7」(1回)
■同年 12月27日(日)
- 5:40~5:45 「演歌一直線」の前(1回)
- 12:54~14:00 「開運!なんでも鑑定団(再)」(1回)
- 14:00~16:00 「日曜イベントアワー」(1回)
- 19:00~20:00 「日曜ビッグバラエティ 激安狂想曲」(1回)
※ その他の番組含め、合計50回。
これらの広告が流れた後、近くの知人だけでなく、地方の親戚や友人からも「あんた、いったい、どうしたの?」という問い合わせが度々きました。
「別に悪いことをしたわけでも、芸能界に入ったわけでもないよ」と笑い飛ばしながら、顧問名鑑とマスコミの力を知りました。
顧問名鑑とは、ヘッドハンティング会社「レイス株式会社」(現レイスマネジメントソリューションズ株式会社)が、2009年2月から開始した中小企業支援事業です。
「大企業での豊富な経験・知見・人脈を持つ人と、その力を必要としている中小企業が、非常勤顧問という立ち位置で契約する」というシニア人材の再活用事業です。
時代の波に乗り、凄い躍進を続けています。
2009年夏当時は、発足間もない時期でしたので、登録企業数も顧問数もまだ三ケタだったと記憶していますが、既に顧問の醍醐味を体験していた私は事業趣旨に共感し、登録をお願いしました。
それから8年、同社には変わらぬ愛顧をいただき、感謝に堪えません。
まとめ
今回の稿は、50代後半に患った大病のどん底で聞いた天の声、シニア起業とその大変さ、それ以降の多くの出会いが今の私を形成している不思議に迫りました。
(他にも感動的な出会いが沢山ありましたが、この稿では省きます。)
そして、何よりも不思議なのは、45年も前の若い時代に、後半生にも関わるカードという未知なる世界と遭遇したことです。
「たかがカード、されどカード」。
日本では、未だに「カードなど無用。無くてもまったく不自由しない」と豪語する方が多い一方、世界に目を向けると“完全キャッシュレス社会”達成目前の国が次々と現れています。
何と、つい最近まで現金オンリーだった中国も例外ではありません。スマホ絡めたその劇的な変化には、ただただ驚くばかりです。
なぜ、世界的にカードをベースとしたキャッシュレスが加速しているのでしょうか? 「決済が便利」という答えが多いですが、それは一面的です。
私の答えは、「地球上には、これほどヒト、モノ、カネ、情報を高度に繋ぐネットワークシステムが、他に存在しないから。」
万事、正しく広く繋がると、生命力が増し、幸福が生まれます。
顧問業をこれから何年続けられるかわかりませんが、この視点だけは忘れないつもりです。
(後編 完)
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