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公開日: : 最終更新日:2017/10/13
カードバカ連載 カードあれこれ 第16回「カードの本質と、ビジネスマッチングと、天啓」(前編)
半世紀近くクレレジットカード一筋に関わってきた“カードバカ”が、カードに関するあれこれを、独自の切り口で語ります。
カード研究家 小河俊紀
皆さん、こんにちは。カード研究家の小河です。
はじめに
私は、今年8月に古希を迎えました。お祝いの宴席で、娘と孫たちが心の籠ったプレゼントをくれ、胸が熱くなる一日でした。
実は、50代の後半に、私は死線をさまよう大病をし、「いったい、何歳まで生きられるか?」という苦闘の時期がありました。
その病魔を乗り越え、数年後に60歳の還暦を家族に祝ってもらったことが夢のような経験でした。
ましてや、70歳を子供と孫に囲まれ元気で迎えられたのは、ただただ感謝です。
今から思えば、還暦~古希にいたる10年間はあっという間でしたが、間違いなくそれまでの人生と違う生き方をしてきた、と自認できます。
それは、「社会にお役に立つことの実践」でした。
気が付けば、いつの間にか中小企業を大企業につなぐビジネスマッチングがライフワークとなり、今にいたりました。
変わった人
大病をする以前から親しいお付き合いのある某友人は、私の顔を見るたび、“変わった人”と評します。
「大病もしたし、年齢からして今ごろ悠々自適な毎日を過ごしてよいはずなのに、どうしてそんなに次々と顧問先を変え、精力的に働くの?」と。
冗談半分に「そんなに稼いでどうするの?」とも。銭ゲバに見えるのでしょうか??(笑)
実際は月額固定方式ですし、解約もありますから、荒稼ぎにはなりません。
私の世代で働いている人はたくさんいます。でも、ほとんどの場合、ひとつか、ふたつの企業で働いています。
嘱託とか非常勤顧問という肩書であっても、それまでの人生と似た給与生活をされている方が多いと思います。
一方私は、一定期間で具体的な成果を求められる“顧問請負人”です。
契約期間は、エポスカードのように8年に及ぶ企業もありますが、平均して1~2年。短いと3ケ月の短期決戦です。
ある程度軌道に乗っている企業を、さらに成長できるよう直言・サポート活動を行うのが基本任務。例えば、ホームページの再編を提案し、私が絵コンテを書くこともあります。
大企業へのプレゼン資料は、かなりバッサリと修正します。ヴィジュアル中心で簡潔に仕上げます。
商品パッケージのデザインを変えることもあれば、社員の電話応対を指導することも。大企業としっかりお付き合いをするには、様々な業務点検・改善が必須だからです。
当事者が気づかない会社の長所を誉める一方、短所も直言するので、時折摩擦が起きます。
くたびれて、自虐的な嫌気が差すことも少なくないですが、それを乗り超え成果が出て、経営者から感謝された時にようやく至福の満足感に浸れます。
「実力と将来性がありながら販路拡大に悩む中小企業に寄り添い、カード業務の経験でサポートする仕事」が私の本業なのです。“顧客開拓”というカードビジネス本来機能の実践的応用です。
ちなみに、業種・地域を問わず顧問をさせていただいた企業は、この10年間で累計28社になります。
直接オファーをいただいたヤマハミュージックリース(現ヤマハミュージックジャパン)や、エポスカード、ジェーシービーといった大企業もありますが、人材会社(計3社。
後編で紹介)から持ち込んでいただいた中小企業が多くを占めます。私の本業を支えてくれる人材会社に感謝です。
大病と天啓
私が60歳にして顧問という職業に出会い、今でも続けていられるのは、いくつかの大きな契機と出会いに恵まれたおかげです。
1) 大病で聞いた天の声
前述のとおり、私は、2005年57歳の春に生死に関わる大病を患いました。今回はその詳細を省きますが、悪性腫瘍を通院で放射線治療しました。
5月から約3ケ月の闘病は、仏教でいう「無間地獄(むげんじごく)」そのものでした。絶望のどん底で、ある朝、自宅の居間から偶然流れてきた平原綾香の「Jupiter」に雷に打たれたような衝撃を受けました。
宇宙を連想する荘重な曲に加え、他者との絆を賛美する歌詞が、天からのメッセージに聞こえたのです。
自分で言うのも変ですが、間断のない地獄のような闘病の真っ最中に「宇宙の声、天の声」を確かに聴いた気がしました。
「これからは、今までの自己本位の生き方を変え、社会的弱者を救う利他の道を歩きなさい!」との厳しい叱責であり、激励でした。
2)病後、Fintecのビジネスモデルが突然閃き、特許となった
その後、病は幸いにも平癒に向かい、3ケ月後の2005年夏から職場復帰しました。
ちなみに、遡る事2年前の2003年6月にヤマハを早期定年退職した後、私は同社カード業務の下請け先である某決済代行企業に誘われ、営業部長として勤めていました。
カード会社とリアル商店街と消費者の間に立って、種々のカード決済を横断的に処理するハブ空港のような企業でした。
飲食業界専門の類似企業が1社あったものの、業種横断的な決済代行企業としては、当時日本唯一のパイオニア的存在でした。
カード業界が長かった私でも、その仕組みに驚愕したのですが、当時は加盟店手数料をかすめ取る怪しいブローカーのように誤解され、新規契約先を求めて訪問しても、冷たくあしらわれた苦い記憶が多々あります。
決済代行企業は、今ではネット通販分野で欠かせない中核産業に急成長しましたので、本当に今昔の感があります。
職場復帰後も、治療の後遺症もあって体調は非常に不安定でした。昼も夜も、不安な日々が続きました。
ところが、翌2006年秋頃の早朝、「クレジットカードの売り上げ情報を可視化し、与信する」ビジネスモデルが突如頭に閃きました(下図)。
弱小な小売店の資金繰りを円滑にする骨子です。
飛び起きて、設計図を描き、即日会社役員に実用化を具申すると、「そんな夢みたいなことを考える暇があるなら、あちこち営業に回ってください!」と即座に一蹴の羽目に。
私の発案は、相談した役員にはまったく通じませんでした。
結果、やむなく自力で特許出願。結果、2007年9月にビジネスモデル特許として正式に認可されました。その発明が新規性、進歩性をもつと国が認めてくれたわけです。
最近、大手メガバンクはじめ、「Fintec」が大きく注目されていますが、私が発案したビジネスモデルは、「ITと金融を組み合わせ、一切の決済を電子化する」という点で、正にFintecそのものです。
近年登場してきたネット出店事業者への融資「アマゾン・レンディング」や「楽天B2B」等も一種のFintecであり、私の特許の類似モデルとも言えます。
10年以上前に、Fintecの原型のような設計図を数時間で一気に書きあげた自分が、今思うととても不思議です。ハッキリ言って、大病の後に神仏の力が宿っていたとしか思えません。資金繰りと拡販に苦しむ中小企業=“社会的弱者”を支援せよと。
3)ハローワーク担当官との運命的出会い
私は、この会社を3年半務めた後、2006年末に依願退職しました。60歳定年直前でした。
公的年金支給開始にはまだ時間があるし、次の就職先は未定なので、かなりの不安を覚えながら、失業保険をもらうために取りあえず地元春日部のハローワークに足を運びました。
過去のサラリーマン時代に2回転職したものの、切れ目なく再就職したので、失業保険給付を一度も受けたことがなく、向こう1年間は毎月23万円の支給を受けられる保証でした。いわば、遊んで暮らせるはずでした。
ところが、最初の面接で応対された担当官が、「小河さんは、特殊な経験をされた専門家なので、ハローワークではなく民間人材会社が横断的に情報交換する専門家求人サイトにすぐ登録されてはどうでしょうか?」とそのサイトのURLを教えてくれました。
それが、私の60代以降を大きく変える契機になるとは、当時はまったく予想していませんでした。
(前編の終わり)
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