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公開日: : 最終更新日:2016/08/25
カードバカ連載 カードあれこれ 第11回 「カードの未来ってどうなる? その(3)」
半世紀近くクレレジットカード一筋に関わってきた“カードバカ”が、カードに関するあれこれを、独自の切り口で語ります。
カード研究家 小河俊紀
皆さん、明けましておめでとうございます。本年も、ご愛読のほど、よろしくお願いいたします。
前々回と前回は、先端の遺伝子工学や生命科学の進歩で、近未来に人間が不老不死になるか、寿命が今よりはるかに長くなる時代を展望しました。
医学的・学術的な次元では私は素人なのでお粗末な解説を自省していますが、カード屋の視点では誰も挑戦したことのないテーマであり、自分なりにこだわりをもって書いています。
前回稿がサイトにアップロードされた直後、懇意にさせていただいている知人から「年をとらないとか不死というのは、人類を滅亡させるかもしれませんね。
種の保存をする必要がなくなるわけで、増やすと地球からそれこそ溢れてしまいます。今以上に再生産をしなくなること確実です。」という趣旨のコメントをいただきました。
極めてごもっともな見解です。人間は例外なく死にますが、子孫を残します。
DNAが継承される限り人類は不滅です。
そのプログラムは、人智を超えており、神仏の領域と言わざるをえません。
もと筑波大学名誉教授で、遺伝子工学の世界的権威である村上和雄博士は、長年のDNA研究の結果、「サムシング・グレート(偉大なる何者か)」に気づき、以降 科学の暴走を戒め、宗教との融和について精力的な啓蒙活動を継続されています。
「生命の仕組みは、まったく驚くほど不思議なことばかりです。~(中略)
それぞれの遺伝子は、見事な調和のもとではたらいています。ある遺伝子が働きだすと、ほかの遺伝子はそれを知って仕事の手を休めたり、いっそう作業のピッチを上げたりすることで、実にうまく全体の働きを調整しています。このような見事な調整が、たまたま偶然にできたとはとても思えません
この見事な調整を可能にしているものの存在を、私は10年ほど前から「サムシング・グレート(偉大なる何者か)」と呼んでいます。
この正体は、もちろん目には見えず、感じることもなかなかできませんが、その存在はあるに違いないと、生命科学の現場で私は実感するのです。」(村上和雄著「生命の暗号」サンマーク出版、P.2)
「何か生命の根源自体がペアの論理によって形成されているような気さえしますが、その生の反対概念である死も、実は生のペアとして、はじめから遺伝子の中にプログラムされているのです。
それが「アポトーシス」と呼ばれる現象です。
(中略)例えば、私たちの生命は絶え間ない死を抱えていて、いま現在でものすごい数の細胞が死に絶えていってくれるからこそ、私たちは生命を正常に保っていられる。」(「続:生命の信号」P.70~72)
カードの存在意義
近年の私は、「そもそも、カードは何のために存在するのか?」と思うことが多くなりました。
「便利だから」「ポイントが貯まるから」という答えは当然あります。ここまで普及してきたのも、そういう利点が評価されたからでしょう。
しかし、未来もそれ止まりでよいのでしょうか?
私見を先に言えば、「カードは、人間の幸福実現のためにあるべき」と考えます。大げさに聞こえるかもしれませんが、今回はその根拠をひも解いてみます。
キャッシュレスを本当に理解すると、あなたの人生が便利で楽しく変わるかも!
スターウオーズ最新作
1977年に公開され、爆発的なヒットとなった「スター・ウオーズ」第7作目“フォースの覚醒”が、昨年12月にリリースされました。
初作“新たなる希望”については、40年近い昔のことであり、ストーリーはそれほど覚えていないのですが、
「時空を超えた壮大な宇宙観」と「登場人物の多彩さ」「善と悪の戦い」「東洋的、特に黒澤明に近い演出」には鮮烈な記憶があります。
それから38年。スターウオーズ最新作は、ジョージ・ルーカス監督が交代し、時代の変化を感じますが、時空を超えた壮大な宇宙観や登場人物の多彩さはしっかり継承されており、あらためて感動でした。
一方、我が歳のせいか違う感慨もありました。まず、地球以外の惑星がいろいろ登場してくる設定について、ふと思いました。
「人類が500年も長生きする必然性(理由)があるとすれば、地球外惑星移住のための適合準備(生物進化)かもしれない。
いずれ、地球環境の悪化などから人類は太陽系以外の惑星に新天地を求めて移住することはありうる。しかし、その距離があまりにも遠く、途方もない時間がかかる。
例えば、昨年7月にNASAが発見した「地球に一番似た惑星ケプラー452b(Kepler 452b)」(左)は1,400光年の彼方。
光速の宇宙船が実現しても、到達まで1,400年もかかる計算になる。
地球に最も近い地球的な惑星Gliese 581はもっと近い20.5光年だが、現状最速の無人衛星ボイジャー1号(時速63,000km)でさえ35万年もかかる。
狭い宇宙船の中で何代にもわたって種を継承するより、個体として長命の方が合理的かもしれない・・・・」と。まったく気の遠くなるような夢想でした。
一方、BB-8というドロイド(左写真のダルマさん型)にすっかり魅了されました。
反乱軍に所属し、Xウイングを操縦するパイロットの分身ロボット(アンドロイド)として活躍します。
銀河系最後のジェダイ(守護者)であるルーク・スカイウォーカーの所在を示す地図をご主人様ポー・ダメロンから預かります。
ヒロインのレイ(上写真女性)と助け合いながら、地図を必死に探す悪の組織から逃れ、最後は大きな使命を果たします。とても愛くるしく、利口なロボットです。
アンドロイドといえば
私は、この連載でスターウオーズの宣伝をする立場でもなく、マニアックなウンチクを語る意図もありません。実は、「カードの未来とは何か」を語るうえで、この「アンドロイド」が大きなヒントになると考えるのです。
アンドロイド(Android)といえば、今やグーグルのプラットフォームとして有名になり、アップル のiosとシェアを二分し、スマホの世界的普及に貢献しています。
(下表は、アウンコンサルティング資料の一部引用)
韓国やサウジアラビア、アラブ首長国連邦、シンガポールなどはスマホ普及率が70%を超えており、既に国民全体の生活必需品になっています。
スマホとネット経由で、個人個人が瞬時に全世界とつながる時代になってきました。
実際、身の回りの眺めても、乗客の7割くらいの人がスマホを覗いている姿を電車で見かけると、正に「スマホは所有者の分身」になってきたと言って、過言ではないでしょう。
カードを遠隔操作する夢を語った時代
スマホにちなみ、1970年代前半、日本でのカード普及がまだ500万枚にも満たない黎明期の思い出を少し語ります。
前々回にも触れましたが、当時、私は20代。大手カード会社で債権回収の仕事を担当していました。連絡がつかない重度の延滞者の調査・追求がメインで、毎日クタクタでした。
そのころ、カード業界も若ければ、社員も若い人ばかりで、平均年齢が20代。
加えて、体育会系が多く、仕事が終わると気分転換のため同僚や上司とよく飲みに行きました。皆さんいずれ劣らぬ酒豪のため、談論風発し破天荒な話題が常でした。
「カード会員と即座に連絡がつく無線の通信手段が生まれたら、今の苦労も激減するだろうな。」日常的な愚痴話と突飛な空想話でいつも盛り上がりました。
もちろん、当時は有線のアナログ電話が普通で、しかも家族共用でした。無線のケータイ電話などない時代です。
何度電話しても訪問しても延滞者は不在のことが多く、債権回収どころか無効カードの継続利用もストップできず、お手上げでした。
そういう事態に対し、即座に本人自身と連絡が付くか、保有カードの効力を停止する装置があれば、どれだけ不良債権を抑えられるだろうかと、現場から生まれた切ない願望だったのです。
1980年代に入り、その夢の一部は、加盟店レジに設置した専用端末(下写真)から専用回線経由でカード会社サーバーとつなぐ「オーソリゼーションシステム」の稼働で実現しました。
高額な利用を制限でき、無効なカードを遠隔操作で使えなくさせる仕組みです。まさに、画期的なチェックシステムの誕生でした。
ただ、当初は一定金額以下の利用はチェックできないこと、地方では端末が普及していないこと、表面化していない不良債権は見抜けないこと等、いろいろ限界もありました。
表面化していない不良債権の早期発見を可能にしたのは、「信用情報機関との連携」です。
多重債務問題が浮上した1980年代半ばに、急速にその効用が注目され始めました。
不審なカード申し込み客、利用動向が異常な既存会員の信用性を浮き彫りにするため、当時自ら各種信用情報機関との提携に携わった経験から、その存在価値が今後さらに増大していくことを確信しています。
オサイフケータイ誕生の衝撃
カード業界では、「延滞管理とマーケティングはコインの裏表」とよく言われます。
営業の立場でも、カード会員個別のニーズがスピーディに正確につかめると、健全な利用促進策を的確に打てます。いわゆる「CRM」「ビッグデータ」です。
そういう意味でも、1970年代回収現場での夢想は、カード業界が進むべき方向性を芯で捕らえていたと思います。
実際、あれから30年後の2006年4月、NTTドコモがケータイ電話に決済機能を搭載した「オサイフケータイ」で、その夢を実現しました。
売り上げ端末や改札口にケータイをタッチするだけで即時決済が可能になったのですから。
当時、私は決済代行企業に勤めていましたが、そのニュースリリースに接した時の衝撃は半端ではありませんでした。全身鳥肌が立った記憶があります。
スマホに受け継がれた機能
オサイフケータイは、世界初のカードレス決済システムでしたが、基礎となる非接触IC技術が国際規格ではないため、ガラパゴス化してしまいました。
日本人として残念ではあるものの、その後アップルペイの仕組みに継承・進化したので、半分納得しています。
スマホがMEMS&カードと連携すると
近未来、進化したスマホが、脳内に埋め込まれたMEMS(マイクロ・エレクトロ・メカニカル・システム。
機械や電子回路、センサーなどを集積した極小デバイス)と連携したら、個人個人の感情や意思を外部コンピューターに伝え、必要な第三者と緻密な連携をとることも可能になるはずです。
(左表は、私の想像図。MEMSの詳細は、前回の稿を参照ください)
実際、脳と脳をネット経由でつなぐBMI(ブレイン・マシン・インターフェース)の研究がかなり進んでいるようです。
もちろん、本人が同意した特定の相手が前提ですが、実現すれば、もの凄い情報通信革命が起きることになります。
さらに、カードシステムと連携すれば、個人別のマーケティング・販売促進・決済・履歴蓄積が迅速・的確に。
「そんな恐ろしいこと!」と、思わず身震いされた読者もいらっしゃるでしょう。
確かに、今まで隠れていた心の世界がいきなり白日のもとにさらされると、気持ちの良いものではありません。でも、何か歯止めがあるなら、興味深い世界です。
アンドロイド(分身)の根源的な意味
「ヒューマノイドロボット(人間型ロボット)の一種。
ギリシア語のandr s(人間、男性)からの合成語である。(中略)映画『ロボコップ』(1987)の主人公ロボコップはサイボーグであり、電子頭脳に人間の記憶をそっくり移植したエイトマンはアンドロイドである。[新藤克己](日本大百科全書より引用)
近未来、医学の進歩で人間はもっと長寿になっていくでしょう。500歳は簡単ではないにしろ、平均寿命100歳は間違いありません。
そのためにも、能力が年々衰えていく人間には、24時間365日生涯にわたって自分をサポートしてくれるアンドロイドが不可欠になるのではないでしょうか?
必ずしも、人間の形をしている必要はありません。「人間らしい心」が最優先です。
スマホが、MEMSから出た脳波信号を、人類の英知・良心を移植した人工知能(AI)と連携させるようになれば、人間は自分の思考を客観的に認識し、整理し、そのうえで自主的に賢く行動することができるようになります。
他人と共有すれば、無用な紛争や事故・病気から身を守れるようになるはずです。
実際に、介護の現場では既に“癒しロボット“がお年寄りに活力を与えています。(写真は、介護・福祉サイト「けあサポ」より)
究極のカード未来像
長々と語ってきた今回の「カードの未来3部作」も、そろそろまとめに入ります。
「近未来、カードは公共的な仕組みと連携し、人間個々の実績を公平に評価する社会システムとなる。」
これが、私の空想的カード未来像です。
教育費含めあらゆる個人消費をキャッシュレス化すれば、個人のクレジット
ヒストリー(信用履歴)を幼少期から長期にわたって正確に汲み上げ、蓄積
した上、達成努力を含めた信用性を正しく査定することが可能になります。
例えば、
- 各種学習履歴、資格取得履歴、表彰履歴、
- 進学履歴、仕事履歴、居住履歴
- 趣味、娯楽含む健全な消費と決済履歴
- 各種公共料金、社会保険料納入履歴
- 社会貢献活動実績(各種寄付も含む)等
応用として、例えば、子供時代の社会学習活動を進学・就職時の参考情報にすることができます。住宅ローンはじめ各種与信技術が向上します。
ポイント化できるものは、報酬として授与することもできます。年金の算定に資することもありえます。さらに、国民の意向が、本音レベルで政治や企業活動に届きやすくなります。
その連携基礎となるのが、マイナンバー制度、スマホ、MEMS、人工知能、各種ポイントカード(電子マネー)と、私は考えます。
ちょうど、この原稿を書き終える直前の今年1月5日、マイナンバーカードを各種ポイントカードと連携させる構想が総務省から発表されました。
ネット上では、情報管理について既に激しい議論が巻き起こっているようです。
ましてや、各種クレジットカードとの連携は、クレジットカードとマイナンバー制度双方のセキュリティ確保に見通しが立つまで、国民の合意を得ることは難しいと思いますが、いずれ必ず本格浮上するに違いありません
空想は、意識された時点から現実に向かい始めるのです。
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