- HOME
- » 特別企画:自他ともに認めるカードバカ小河 俊紀氏コラム » カードバカ連載 カードあれこれ » カードバカ連載 カードあれこれ 第8回 「キャッシュレスは、個人消費だけの世界なの?」(後編)
公開日: : 最終更新日:2015/12/08
カードバカ連載 カードあれこれ 第8回 「キャッシュレスは、個人消費だけの世界なの?」(後編)
半世紀近くクレレジットカード一筋に関わってきた“カードバカ”が、カードに関するあれこれを、独自の切り口で語ります。
カード研究家 小河俊紀
皆さん、こんにちは。カード研究家の小河です。前回は、キャッシュレスとは、個人消費だけの世界ではない」という持論の前編を書きました。
私は、「従来の企業間商取引(BtoB)の決済構造が時代に即していないため、零細事業者や一般消費者にしわ寄せがいっているのではないか。」と長年感じてきました。
今回は、その意味と、改革案を極力具体的に解説します。もちろん、誰も書いたことがない切り口です。キャッシュレスを本当に理解すると、あなたの人生が便利で楽しく変わるかも!
世界最強のコンビニ「セブンイレブン」
24時間・365日、たいがいの生活用品が手に入り、現金の入出金や振込も手軽なコンビニ。コンビニがないと困る時代になりました。
その中でも、セブンイレブンの存在は際立っています。
店舗数17,491店(2015年2月現在)、日本はもちろん世界でも最大級のコンビニチェーンです。(上図は同社HPより)
1974年、東京都江東区豊洲の酒店「山本茂商店」がフランチャイジー1号店でした。それから41年、ハイピッチで成長してきました。
そのネットワークは地域、世代を超えて、知らない人はいません。
年間売り上げは4兆円に迫り、業界全体におけるシェアも38.3%(2013年)と、他を大きく圧倒しています。
セブンイレブンの舞台裏
しかし、そのビジネスモデルを支えるバックヤードについてはあまり知られていません。舞台裏ですから当然です。実は、2007年に、日経コンピューターの「IT Japan Award 2007」第一回グランプリを受賞したほどの凄いシステムなのです。
詳細は後述しますが、奇しくも私の特許取得時期に重なり、その受賞記念講演資料をもとに、双方の類似点・相違点を研究したことがあります。
(一部勘違いがあるかもしれませんが)同社のフランチャイズは「毎日の店舗売上と仕入代金がセブンイレブン本部サーバーで一元管理され、翌月初に1ケ月分がロイヤリティとともに一括相殺され、残金がお店に返金される一種のキャッシュレスシステム」で機能しています。具体的には、
- レジの売上処理
来店客のレジ精算は、現金でもナナコでもクレジットカードでも専用端末が処理します。従って、即座に電子データ化され、回線を経由して本部で可視化されます。 売上データと現金の整合性チェック
売上のうち、現金は当日中に店内のATMに入金され、
現物と売上データの整合性を記録・確認します。
さらに、入金された現金は、来店客の現金引き出し用に
再利用されます。ATMの管理は、グループのセブン銀行が行います。- 仕入れのキャッシュレス化と一括精算
日常の仕入先は、原則として本部が包括契約した企業です。専用端末からキャッシュレスで直接発注できます。発注先企業名や金額・商品種類・数量も可視化されていますので、売上・ロイヤリティとの一括精算は後日本部が一元的に行います。
店舗側のメリットとしては、
- 「ブランドイメージが高いので、駐車場さえ確保できれば、一定の集客が見込める。」
- 「現金を店外に持ち出す必要がない」=「店員が現金に触れる時間が少なく、紛失・盗難など種々のトラブルを抑止できる」
- 「日計で収支を迅速・正確に共有でき、本部から的確な経営アドバイスを受けられる」、
- 「仕入れ先の開拓・交渉作業が不要で、しかも専用端末からキャッシュレスで発注できる」
などなど「経営の効率化と安定化」があります。
企業間取引決済の課題
巨大流通業であるセブンイレブンは別にして、一般的な企業間取引での買い手側の資金調達方法は、もっと古典的です。大きく分類すると、ふたつあります。
ひとつは、「企業間信用」といい、当事者の掛売買や手形があります。それ以外には、金融機関からの借り入れが大きな比重を占めています。では、それぞれのメリット、デメリットは何でしょうか。単純に言えば、概ね下記です。
高度成長時代には、それなりにメリットもありましたが、バブルがはじけて以降「弱小な事業者ほど不利になる」マイナス面が強くなっています。
長所 | 欠点 | |
---|---|---|
当事者掛売買 | ・長年の信頼関係 | ・信頼構築までの長い時間・双方の力関係で条件左右 |
手形決済 | ・期日決済に対する安心感・金融機関で資金化可能(割引) | ・不渡発生時の社会的制裁・事務処理負担大 |
金融機関借入金 | ・低利な貸し出し利率 | ・煩雑な借入手続き・審査・貸しはがし |
自営業者としての経験
私は、2008年よりクレジットカード業務の経験と人脈を生かし、主に中小企業向け経営コンサルを自営しています。自身が零細な個人事業者なのに中小企業の支援をしているのも僭越ですが、創業8年間の実感として、「中小企業は、ともかく弱い」に尽きます。
「人材がいない」「お金がない」「システムがない」「人脈がない」・・ナイナイ尽くしです。ですから、商取引でも力のある相手に条件をいろいろ左右されます。
頼りにしたい金融機関は、優良企業への融資が鉄則ですから、弱小な企業には冷たい。“晴れた日(企業)に傘を貸す銀行”と皮肉られます。一昨年ヒットした「半沢直樹」が記憶に生々しいところです。
下記の資料も、その実態をよく表しています。(一般財団法人 商工総合研究所 「企業間信用と電子取引」P.20)
しかし、金融機関独特の冷淡さに対し、私は別な解釈もしています。「金融機関には、企業の生の現状を刻々測定する可視化装置がない」のです。
変化が激しい今の時代に、決算書や不動産など過去の経営資料をもとに企業の経営実態を判断する金融システム自体、無理があるのではないでしょうか。
過去の資料で、現時点の正確な売上・売掛・買掛・収支は掴めません。売掛担保融資というのもありますが、売掛債権を担保に融資する仕組みはとても煩雑で、実用的ではありません。
一方、近年ネット取引が企業間取引(BtoB)の世界でも急成長し、商取引内容がリアルタイムに記録される背景を受けて、平成20年12月、電子記録債権を手形のように独立して処理できるよう「電子記録債権法」が施行されました。
(以下は、前記 一般財団法人 商工総合研究所 「企業間信用と電子取引」P.42)
- « 前の記事へ戻る
- 1
- 2
- 3
- 記事の続きを読む »
関連記事
-
-
カードバカ連載 カードあれこれ 第9回 「蕎麦打ちと放送大学と、カード」
半世紀近くクレレジットカード一筋に関わってきた“カードバカ”が、カードに関するあれこれを、独自の切り
-
-
カードバカ連載 カードあれこれ 第7回 「キャッシュレスは、個人消費だけの世界なの?」(前編)
半世紀近くクレレジットカード一筋に関わってきた“カードバカ”が、カードに関するあれこれを、独自の切り
-
-
カードバカ連載 カードあれこれ 第11回 「カードの未来ってどうなる? その(1)」
半世紀近くクレレジットカード一筋に関わってきた“カードバカ”が、カードに関するあれこれを、独自の切り
-
-
カードバカ連載 カードあれこれ 第14回―(3)「キャッシュレス社会と、人の幸福」
半世紀近くクレレジットカード一筋に関わってきた“カードバカ”が、カードに関するあれこれを、独自の切り
-
-
カードバカ連載 カードあれこれ 第2回「信用と性格の関係」
半世紀近くクレレジットカード一筋に関わってきた“カードバカ”が、カードに関するあれこれを、独
-
-
カードバカ連載 カードあれこれ 第14回―(4)「キャッシュレス社会と、人の幸福」
半世紀近くクレレジットカード一筋に関わってきた“カードバカ”が、カードに関するあれこれを、独自の切り
-
-
カードバカ連載 カードあれこれ 第17回 「人口知能で実現してほしい夢」
半世紀近くクレレジットカード一筋に関わってきた“カードバカ”が、カードに関するあれこれを、独自の切り
-
-
カードバカ連載 カードあれこれ 第13回 「ATMでのカードキャッシング不正使用事件」
半世紀近くクレレジットカード一筋に関わってきた“カードバカ”が、 カードに関するあれこれを、独自の
-
-
今さら聞けない 「カードって、何?」 (前編)
半世紀近くクレレジットカード一筋に関わってきた“カード馬鹿”が、その歴史と仕組み、賢い使い方