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加盟店をめぐる犯罪

まえがき

加盟店というとすぐ頭に浮かぶのは、コンビニ加盟店(セブンイレブンの店)やクレジットカードの加盟店です。今では、百貨店やコンビニ、スーパーマーケット、ほとんどの商店で問題なくクレジットカードが使えますが、私には、クレジットカードはつかえますか?」と恐る恐る店の人に聞くと「当店では使えません」とにべも無く断られた記憶が残っています。

ところで、加盟店とは?とは何を意味する言葉でしょうか。広辞苑にはこの単語の説明はありません。「加盟」とはある団体に加入すること、とあります。小学館のランダムハウス英和大事典で、「加盟」に当たる言葉として、次の3つの単語を見つけることができました。

  • FRANCHISE……
    特権、特許・一手販売権(ここから、フランチャイズ制度と言う言葉が類推されます)
  • FRANCHISER……
    一手販売権者(ここから、国際ブランカード会社という言葉が類推されます)
  • FRANCHISEE……
    チェーンストアの一つを任された人(ここから、加盟店という言葉が類推されます)

1. クレジットカード加盟店とは

クレジットカード加盟店とは「クレジットカード業界団体に加入した商店」と理解してよいでしょう。なお、「加盟店」の語に対して「直営店」(一手販売権をもつ大企業が直接運営する商店)という言葉があります。

一方、カード会社はクレジットカードを発行する部門(イシュア)と加盟店の面倒を見る部門(アクワイアラ)に2分されます。両者は同一の会社である場合と別の会社である場合とがあります。

本項では、この加盟店について少し詳しく掘り下げ、併せて、加盟店をめぐって発生する犯罪行為を考察してみましょう。

1. 加盟店規約

加盟店はクレジットカード会社との間で交わされた加盟店規約で結ばれています。代表的な規約として、JCB規約と三井住友カード会社の規約を読んでみました。

いずれも条文は1条から38条まです。三井住友カードの場合は、さらに本条文に続き「加盟店情報の取扱に関する事項」としてさらに1条から7条までの附則が付されています。

JCB規約

  • 「一般加盟店」と「電子マネー」の二つの部に分かれています。
  • セキュリティ関係では、次ぎの4つの節に分かれています。
    名板貸し
    差別的取り扱い
    カードの不正使用
    反社会的勢力との取引拒絶

三井住友カード規約

次ぎの五つの部に分かれています、セキュリティ関連の条文は全体の条文の中に織り込まれています。

  • 一般の規約
  • 通信販売店
  • VJAギフトカード取扱規約
  • ID取扱規約
  • 銀聯カード加盟店規約

筋としては、ここで全文開説と行きたいところですが(これをじっくり読めばクレジットカードの大方の仕組みが分かります)、紙数の関係で無理です。セキュリティ関係だけでも、次の事項が詳しく述べられています。参考になります。読んでみましょう。

  1. 不審な取引きの通報
  2. 無効カードの取扱
  3. 会員との紛議に関する措置
  4. 加盟店の禁止行為(全部で9つあります)
  5. 個人情報守秘義務

2. 加盟店手数料

加盟店は、原則として、カードによる売上代金に一定率を乗じた金額をカード会社(アクワイアラ)に支払います。この一定率は下表に示すように1%から10%と決められています(勿論、カード会社によって多少異なります)。

なぜ払うのか?加盟店側のカード会社に対する反対給付(すなわち「クレジットカードのお陰で商売ができました。このお金はお礼の印です」)、あるいはブランド利用料、または商売運営のノウハウを教えてもらった授業料と言われています。(加盟店側がこれらの説明を素直に受け入れているかどうかは?マークです)この「一定率」は、売上代金回収の難易度によって決まります。

加盟店手数料はクレジットカード会社の重要な収入源の一つです。原則として手数料の4分の3がイシュアに、4分の1がアクワイアラに分配されます。

  • 風俗店……7~10%
  • バー、クラブ、などの飲食店……4~7%
  • 一般の小売店……3~5%
  • デパート……2~3%
  • 家電量販店、コンビニ……1~1.5%

かつて、T社は加盟店獲得を急ぐため、採算を度外視して(ほかでたっぷり儲けていたので)「手数料1%」を振りかざし、カード業界で物議を醸したことがありました。

参考までにもう一つ話を付け加えておきます。加盟手数料は商品代金に上乗せすることはできません。また、購入者に転嫁することも禁じられています。転嫁するのを認めている国は世界広しと言えどもオーストラリア1国のみと言われています(確かめることはできませんでした)。

3. 不良加盟店

不良加盟店は通常次ぎの3つに分類されます。

  1. 店ぐるみ、あるいは一部の店員が不正を働く店
  2. 客の威圧的な態度や脅しに屈してクレジットカードの不正使用を黙認する店
  3. 外部の犯罪者と手を組みやすい、警備が薄い、逃亡し易い、あるいは

店員教育をなおざりにする店、など。

4. 不良加盟店とチャージバック

次項で述べるように、加盟店が一端「不良加盟店」の烙印を押されると、その後は、取引上の紛争が生じチャージバックが発動された場合にはこの加盟店は圧倒的に不利な立場に立たされます。

5. 不良加盟店の探知

国際ブランドカード会社(VISAやMasterCardなど)は次ぎのような探知・通報システムを展開しています。いずれも大容量のコンピュータを駆使して、加盟店における不正行為を探知し、その事実を世界中のメンバー(アクワイアラ)に通知します。

① RISシステム

VISA Worldwideのアクワイアラのリスク管理を保管し、怪しい取引を行う加盟店を特定し、これをアクワイアラへ通告し、不良加盟店を排除することを目的とする危険識別探知・通告サービスです(Risk Identification Service)。このシステムのもう一つの狙いは、チャージバック件数をできるだけ小さくすることです。

② 8%merchant watching system

MasterCard Worldwideの不良加盟店識別・警報システムです。一定期間における、加盟店に対するチャージバック件数、偽造カードや紛失カードによる取引件数、不正売上伝票取扱件数などの事故取引件数・金額を分子とし、総売り上げ数・金額を分母としてその割合が8%を超える加盟店をあぶり出し、その結果をまず関係アクワイアラへ通告し、次いでSecurity Bulletinに公開するシステムです。

③ Security Bulletin での公開

不良加盟店名の公開期間は6~12ヶ月です。これにより、この加盟店に対して無条件でチャージバックを行うことが認められ、アクワイアラはこれに対抗することはできなくなります。

④ 加盟店情報交換センター(JDM)

日本クレジット協会は経済産業大臣から認定された業務の一環として、クレジット利用者等の利益を保護するために必要な情報の収集・整理・提供を加盟店情報交換センターで行っています。共同利用される主な加盟店情報は次のとおりです。

  1. 加盟店に係わる苦情処理調査事実とその理由
  2. 利用者の保護に欠ける行為など
  3. 行政機関が公表した事実についてJDMセンターが収集した情報
  4. その他、利用者の保護に欠ける行為に関する情報、など(筆者注)「JDM」の本文は分かりません。「不明解略語辞典」にも掲載されていません。
  5. 買い回りチェックシステム

クレジットカード会社が導入しているカード不正使用探知システムです。
買い回りは、次ぎの行為をさします。

  1. 短期間で換金率の高い商品を大量に購入し、カード会社から請求書が送られて来る前に姿を隠してしまう行為。
  2. 偽造クレジットカードを使って買い回る行為。

6. 加盟店をめぐる犯罪手口

クレジットカード犯罪はその6割が加盟店を舞台にしで発生しています(国際ブランドカード会社の統計)。加盟店をめぐる犯罪にはいろいろな手口がありますが、ここではそのうちの主な不正行為をリストアップしておきます。

  1. カード情報の横流し
    加盟店に置かれたカード端末機に読取られたクレジットカードの個人情報がなんらかの手段で不正に持ち出され外部に流出する(売却される)ケースです。
  2. 架空売上伝票の作成・伝票の改ざん取引が無いのにあたかも取引があったように見せかけて売上伝票を作成する、実取引で作成された売上伝票の金額や日付などを改ざんする、あるいは、高額の取引で義務付けられているオーソリ請求を回避するために取引伝票を小口に分けて複数の伝票を作成するケース、などです。
  3. 外部犯罪者との共謀
    外部の犯罪者と手を組み、多重債務者が他人のカードを使って多額の買い回りをしているのを黙認する、あるいは、偽造カードと分かっていながらその使用を黙認するケースなどです。
  4. たこの足食い
    事故キャッシングとも呼ばれています。資金繰りの手段として、架空伝票を作成してアクワイアラから資金を受取り、その後取引がキャンセルされたと称して返金するケースです。
  5. 夜逃げ
    数ヶ月間、真面目に商売しているように見せかけ、折を見て多額の架空伝票を作成してアクワイアラから現金を受取り、店を捨てて住所を晦ませてしまう手口です。
  6. 名板貸し
    加盟店が、カード会社の加盟店審査に落ちた商店等(小口の店,屋台など)に対し、自店に与えられた「加盟店」の名義を貸す行為です。

7. アクワイアラ責任論

加盟店で不正行為が発生下場合その責任はどこにあるのか。という問題が議論されています。

当初は、責任は、悪用され易いカードを発行したイシュアすなわちカード発行会社にある、と言われてきましたが、年月の経過とともに、責任は犯罪が発生し易い環境を見逃してきた加盟店管理会社、すなわちアクワイアラにあると言われるようになりました。加盟店手数料の分配に絡む問題です。

8. むすび

以上、加盟店そのもの並びに加盟店をめぐる犯罪行為について整理してみました。加盟店をめぐる犯罪の中身などを知ると、なんとなくクレジットカードを使うのを躊躇(ためらう)いたくなるかも知れません。

われわれとしては、要するに「クレジットカードは便利だが危険が一杯」あることを充分わきまえて、自分のカード情報をしっかり守っておくしかありません。

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