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クレジットカードの表と裏

クレジットカードのサイズについてはすでに述べました(7回を読み直してください)。今回は、この約8.5センチX5.4センチの大きさのカードの表と裏にぎっしりつ詰まった工夫と情報について説明しましょう。

なお、カードの印刷には蛍光インクが使われています。紫外線を当てると隠し文字が浮かび上がる、という特殊な印刷技術です。

カードの表面

磁気テープ

カードには情報伝達機能という至上命令が課されています。具体的に言うと、ショッピングやキャッシング取引を行うとき、カードの持主は間違いなくカード会員本人であることを店員やATMに知らせなければなりません。この仕事をするのが磁気テープです。

磁気テープは用途により、オーディオ用、ビデオ用、コンピュータ/データ用とに別れ、アナログ方式とデジタル方式とがあります。

厚さ0.037ミリ、幅12.7ミリのポリエステル素材に0.01ミリの上塗りを施し微粒子磁気体(鉄粉)を塗りつけたもので、これをカードに貼り付けます。

さらに手の込んだものがあり、肉眼で見えなくするため特殊な上塗り(コーティング)をしたカードも登場しています。磁気テープの情報収容能力は最大で80文字。

ICチップに較べると問題にならないように小さいですが、コストの関係もあり、一挙に切り替えることは出来ません。1967年、ロンドンのバークレイズ銀行が初めてMT付きのカードを発行しました。

日本の第1号は1969年に発行された住友銀行のキャッシュカードと言われています。現在、日本において出回っているカードの大半はMT付きのかーどであり、徐々にICカードに切り替えられていますが、その歩みは遅いようです。

全銀協も銀行側のお尻をたたき、経済産業省も2020年の東京オリンピックまでには全部をを切り替える、と大号令を発していますが、果たして掛け声どおりに行くでしょうか。

磁気テープを張るのはカードの表か裏か

磁気テープを張るのはキャッシュカードの表か裏か、という問いに対し1972年全銀協は「銀行統一仕様」なるものを策定し表張りを申し合わせました。

銀行を母体行とするクレジットカード会社も勿論右に倣えで、磁気テープをクレジットカードの表にはることとしました、これを「NTT規格」と言います。

しかし、4年後の1976年、国連の国際標準機構は「MT規格」を制定し、磁気テープの裏張りを決定しました(ISO/IEC7810 ID-1)。

日本のやり方と逆の仕様が決められたわけです。わが国では、ちょっとゴタゴタガ生じましたが結局両方ともOKとなりました。1979年通産省は国連の決定に対応するため、裏張りをJIS Ⅰ型、表張りをJIS Ⅱ型としました(JIS X 6301と6302)。

その後約20年間、磁気テープを読取る信用照会端末機の仕様をめぐりJISとISOとの食い違いが問題化し始め、通産省は Ⅰ型を「JIS標準型」、Ⅱ型を「JIS標準型付属書」と呼ぶこととしました。

自動車業界にはリコール制度があります。人の命がかかっていますのでコストを無視してでも回収してやり直しするわけです。しかしカード業界はそうは行きません。結局表も裏もOKとなってしまいました。このやり方を認めているのは世界広しと言えども日本と日本の真似をした韓国の2カ国だけです。

ICチップ

Integrated Circuitという集積回路と言い、米粒大の電子体です。ICチップには、MTに較べると約100倍の文字を書き込むことが可能で、自己演算能力を備え、小さなコンピュータとも言われています。

偽造・変造にも強い抵抗力を示し、セキュリティにも強い優れものです。1982年、フランスのカルテブルー社が始めてこのチップを埋め込んだカードを試作しました。

日本では、翌年1983年、大日本印刷、凸版印刷、カシオ計算機がICカードの生産技術を確立しました。ICチップを埋め込んだカードの利用範囲はきわめて広く、クレジットカード、キャッシュカード、電子マネー、社員証、高速道路のFTC、携帯電話、スマートフォーン、などに利用されています。

カード番号

16桁の数字が刻印されています。ISO/IEC7812で規定された番号です。最初の1桁は業態分類コードと呼ばれ、カードの発行社がどの業態に属しているのかを示しています。次のとおりです。

  • 0 予備番号
  • 1 航空会社
  • 2 同上
  • 3 T&E関連
  • 4 銀行系(VISA)
  • 5 同上(MasterCard)
  • 6 信販系
  • 7 石油系
  • 8 電気通信系
  • 9 その他

また、最初の6桁を発行社識別番号(BIN)と称し、Issuerを示しています。残りの10桁はissuer が自社の都合で使っています。

昔は13桁のカード番号も持ったクレジットカードがあったようですが、現在はなくなっています。もしお手許にお持ちでしたら大切にしまいこんでおくことをお勧めします。珍しいカードとして骨董的価値がでるでしょう。

有効期間

通常、カードの満期日、expiry dateが刻印されています。

ホログラム

カードの偽造を防ぐ対策の一つとした採用されました。1949年ノーベル物理学賞を受けた英国のD. Gabor が発明したものです。

レーザー光線を用いて光波が被写体の各部で回析する原理を応用し、画像を立体的に浮かび上がらせる特殊なフィルムです。2003年、さらに高度化されたものが登場しました。

国際ブランドカードマーク

VISA とかMasterCard, JCBなどのブランドマークついています。表のどこにつけるか、で国際ブランドカードと日本のカード会社との間で小競り合いがありました。

目立つところに自社のマークを付けたいのは誰でも共通に心理です。力関係で決まってきたようです。現在は、カードの全面積の15%以下が国際ブランドの占める割合とされています。

カード発行社の名前

Issuerの名前とロゴが刷り込んであります。Issuerにとっては、ここの面積が大きければ大きいほど自社の宣伝が行き届きます。たまには広げすぎて、国際ブランドカード会社からお叱りを受けることもあるようです。カード会員も氏名アルファベットで刻印されています。

internationalの文字

クレジットカードが日本で始めて発行された1960年ごろは、海外旅行、外国との取引などは、夢のまた夢、厳しく禁止されていました。

その頃日本のカード会社が発行したクレジットカードには、「valid only in Japan」, 「国内専用」、「このカードは国内専用である。

外国では使用できない」,「日本国内用」などの文言が刷り込まれていました。その後1980年ごろから為替管理が緩和されだし、業務渡航、留学などが可能となり、それとともに日本のクレジットカードも海外で利用することができるようになりました。

前述した「国内用」などの制限文句の代りに「国内海外共通」、「国際カード」などの言葉が登場してきました。

このとき、住友クレジットサービス社が「international」という文言をカードの表の上の部分に表示しました。これがまことにカッコよく、他社もこれに倣いました。

韓国のカード会社も真似をしました。ただし、このinternationalという文言をつけているカードはなぜか日本と韓国に限られ、外の国のカードには例がありません。面白いですね。

カードの裏面

磁気テープ

表の説明と同じです。

書名欄

シグネチュア・パネルと呼ばれています。ここに、カード会員が自分でサインする場所です。カード会員が本人かどうかを示す重要な役割を果たしています。

このパネルには2種類あります。カードの端から端まで貼り付けてあるものと、カードの中ごろに貼り付けたものとがあります。

この端に届かないパネルを「アイランド。パネル」と呼んでいます。このパネルには地紋と彩文という偽造・変造防止策として特殊な印刷技術が施されています。地紋は、淡い色の網目や砂目を印刷したもの。

彩文は、円、楕円、波などの形を複雑に組み合わせた幾何学的な模様です。肉眼では識別されません。カード会員の書いたサインを消しゴムなどで消して自分のサインを書き込むとすぐ分かる性質を持っています。

このパネルには、カード会社がカード会員に割り当てる番号が特殊な印刷技法で打ち込まれています。これを特殊文字と呼んでいます。偽造対策の一つです。

ホログラム

表の説明と同じです。

カード発行社の名前

Issuerの名称、住所、電話番号等が記録されています。

ATMマーク

海外に出かけたときは、この印と同じ識別マークを表示しているATMを利用しなさい、というマークです。クレジットカードの大切な機能の機能の一つにキャッシングがあります。

現在国内で流通しているクレジットカードは原則として国内に設置されている約19万台のATMの対応でき、キャッシング取引が可能です。

しかし、海外では、VISAのPLUS, MasterCardのCIRRUSなど機種の異なったATM が展開されており、ウッカリすると現地通貨が手に入りません。

どのようなカードもOKというATMもあります。これをグローバルATMといいます。外国人が日本にやってきてATMのキャッシングで苦労しているケースが時々目に入ります。国内の19万台のATMが全部グローバルATMとなるのはまだ先の話です。

以上で「カードの表と裏の話」はおしまいです。もう一つ「生カード」という業界用語がありますので付け加えておきましょう。

「生カード」とは、磁気テープとカード会員名とを入れればすぐ市場に出ることができるカードのことです。準備万端すべて整い、後は新しいカード会員の個人名、属性情報などを書き込めば出来上がりというカードです。

印刷業者の手元でカード会社からの注文をまっており、注文あり次第一人前になって社会に出るカードで、カード偽造グループが涎をたらして欲しがるものです。

この項の最後の締めくくりとして、カードのセキュリティ対策について、もう一度振り返っておきましょう。

このちっぽけなカードにも、ICチップ、ホログラム、コーティング、特殊文字、地紋と彩文、蛍光インク、という6種類の防犯対策が加えられていることがお分かりいただけたと思います。「カード業界はハリネズミ」と言われる所以です。この話はまた後でゆっくり致しましょう。

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