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公開日: : 最終更新日:2015/12/08

カードバカ連載 カードあれこれ 第10回 「日本人は、なぜ現金好きか?」(後編)

半世紀近くクレレジットカード一筋に関わってきた“カードバカ”が、カードに関するあれこれを、独自の切り口で語ります。

カード研究家 小河俊紀

皆さん、こんにちは。カード研究家の小河です。

前編では、「日本人はなぜこんなに現金好きなんだろうか?」という謎に迫ってみました。後編は、「2020年東京オリンピックまでに、日本が世界一流のキャッシュレス社会になるための方策」を予告しました。

昨年6月の閣議決定から1年たっても、国の関係機関から具体的なプランらしいプランが出ていない段階で、一市民の私があれこれ語るのは、出しゃばり過ぎです。そこで、今回の後編では、論点を絞って書いてみます。

キャッシュレスを本当に理解すると、あなたの人生が便利で楽しく変わるかも!

いただいた読後感

サイトにアップ直後から、「誰もが思いつかない視点で書かれ、一歩頭抜けた秀作だった」という共感・賛辞を5~6名の知人から直接いただきました。

「普段何気なく“日本人は根っから現金好きだ”と信じて疑わない深層心理は、ここ150年で醸成されたものだった」と、初めて悟った方が出てきた現実に、私も感動しました。

したがって、後編の大筋は、もう推測いただけたと思います。

そうです。これからの日本に必要なものは、「政府と国民が一体になって、クレジットカード、キャッシュレスの意味を曇りなく正しく深く理解し、共有する」に尽きるのです。

そろそろ、古い国民体質を変えていくべき時機がきているのです。

マイナンバー制度の認知度合

この10月から、国民全体を個別に管理するマイナンバーが全国民に通知されます。2016年1月から、税や社会保障関係の手続きなどに使われることになります。(下記は、総務省発表資料)

しかし、それほど喫緊の重大政策なのに国民の認知度は、まだまだ低いようです。

下表は、株式会社 クロス・マーケティングが全国47都道府県に在住する15~79歳の男女を対象に、「マイナンバー制度に関する調査を行い、7月に発表した資料です。

この調査では、名前も内容も知っていると答えた人は、わずか55%。逆に言えば、二人に一人はほとんど何も理解していないのです。

私は、個人情報を管理・活用するカード業界に長年携わってきましたので、マイナンバー制度自体は、総論としておおいに共感しています。

国民個別の認知が曖昧でよい時代は、終わりました。実際、近年の年金給付漏れ発覚が制度導入の必然性を促しました。

しかし、今のところそれ以外の基本的メリットについて、税金収納の効率化だけが目立ちます。公表資料を読んでも、説明セミナーに参加しても、付帯メリット・デメリットは分からない事だらけです。

とりわけ、マイナンバーの情報漏えいは、刑事罰まで用意されている超センシティブ情報だというのに、「情報の悪用によって、被害者本人にどういうことが起こるのか?」について、私は一度も具体的な公式見解を聞いたことがありません。

例えば、マイナンバーカードの先輩格に当たるクレジットカードなら、「紛失・盗難・スキミング等でカード番号が漏れたら、リアル店舗、もしくはネット上で第三者の成りすましが起こり、商品詐取被害が発生する」ことに尽きます。

その手口は時代とともにどんどん進化するので、カード会社は様々な被害防止策を継続的に講じてきました。

ましてや、国民の収入・財産・勤務先・税金・年金ふくめあらゆる生活基盤をほぼ丸裸(完全可視化)するマイナンバーが、もし関係のない第三者に漏えいし、成りすましで悪用されたら何が起こるのか??

もしかしたら、いつの間にか本人の知らない間に、年金だけでなく、財産のすべてを失うことが起こりえるのか?

そういう最悪の事態を防止するために、国民は何を注意したらいいのか。それでも、大きな被害が万一発生した場合、誰が責任をとるのか?

クレジットカードなら、必ずカード発行会社が一元的に対応してくれます。しかし、縦割り行政当局が相手の場合、所管が不明とか何かで、下手をするとたらい回しになるだけか、と不安を覚えるのは私だけでしょうか。

マイナンバーカードは、従来の運転免許証に代わる重要な身分証明書になると聞きますが、「提示を求められても番号表記のある裏面のコピーは撮らせてはいけない」などのルールがあると聞きます。

判断力が弱い高齢者・未成年には徹底困難な義務です。それで被害にあったら、高齢者にとってオレオレ詐欺どころのレベルではありません。

クレジットカードは国家的インフラ

歴史的に、日本の諸官庁は半世紀にわたってクレジットカードに規制策ばかり講じてきました。特に、そのセキュリティ管理について、業界への締め付けを日々強めています。

それはそれで仕方のないことですが、(無礼を覚悟で言えば)同じ個人情報管理の大先輩であるカードモニタリング・不正使用検知システムを、各省庁のマイナンバー担当官は詳しく研究されたことがあるのでしょうか?

クレジットカードの発行・管理・決済に関するインフラは、過去半世紀以上にわたって世界のカード会社が多大な血と汗を流して構築してきた“広くて、緻密で、奥深い”世界です。すでに国家的インフラとさえいえます。

ネット社会を支えているもの

「カードが国家的インフラ」というと、大げさに聞こえるかもしれませんが、諸外国は別にして、私の古巣であるJCBを例にその根拠を語ってみます。

例えば、インターネットは今やなくてはならない社会インフラになりました。そのシンボルがスマホです。それは、国民の大半が認めるところでしょう。

スマホでは、ネットを介在して通信機能と購買機能と決済機能が多用されます。ネット通販が代表格です。ネット通販では、「楽天市場」「アマゾン」「Yahooショッピング」などが代表格でしょう。

ところが、その運用インフラ(メカニズム)は、すべてクレジットカードが開拓してきた世界のなぞりにすぎません。

1) 会員・加盟店制度

どのサイトも不特定多数の消費者を、会員と称して囲い込み、個別の符号(ID,パスワード)と特別のサービスを供与します。これで、一人一人を識別管理できる特定多数にするわけです。

また、多数の異業種小売店を加盟店として囲い込み、各店の存在・商材・催事を登録会員に紹介することで、誘店を促進します。その売上成果に応じて、所定のロイアルティ(送客手数料=加盟店手数料)をお店からいただくわけです。顧客手数料は、原則無料です。

リアルとバーチャルの違いはあっても、この構図は、それこそカード業界が開発し、長年育成してきた世界そのものです。

2) 通信販売

通信販売制度の歴史は古く、日本では明治9年(1876年)のアメリカ産トウモロコシの種の通信販売が最初といわれています(ウィキペディア)。

しかし、昭和45年(1969年)に日本橋高島屋とJCBがタイアップして実施した通信販売が、特定の大量消費者に多種類の商品を告知し、電話やハガキ、Faxで受注・配送・決済する一気通貫の仕組みとして草分けかもしれません。

これは、それなりの成果が出たため、そのあと保険商品や各種チケット販売にも拡大されていきました。

JCBは、1980年代中頃チケットぴあと提携してチケット受注代行を始めましたが、人気チケットが発売されると電話回線が焼き切れるほど注文が殺到したのを、当時30代半ばだった私は鮮明に覚えています。

チケットぴあは、コンサートイベント文化を地方に波及させた先駆的企業ですが、カード会社がしっかりお手伝いをした、ともいえます。

3) 決済

決済は、カード独自の生命線です。普段カード嫌いな人でも、ネット通販ではカード決済を選ばざるをえないような強制力(魅力、利便性)があります。

これも、私が30代の頃でしたが、1978年にスタートしたばかりの「24時間テレビ(日本テレビ)を応援しよう!」というテーマが社内プロジェクトになりました。

いろいろ議論した結果考え付いたのが、「電話で任意の寄付金額を申し出てもらい、後日カード決済の上、JCB経由で一括寄付する」という発想でした。そのアイデアは即実行され、全国から多額の寄付金を集めることに成功しました。

今では、同番組の寄付の受け皿・運用は財団法人化され、すべてのブランドのカード寄付を扱っているようです。

以上は、カードによる一括寄付を日本で初めて行った裏話です。

加えて、クレジットカードの現物がなくても、カード番号と有効期限・氏名を確認して決済するネット通販の原理を開発した歴史でもあります。

4) 汎用ギフトカード

全国でブームとなっているプレミアム付き地域振興券をはじめ、今では、業種を超えて使える汎用型商品券は当たり前になりました。

アマゾンも、アマゾンのサイト上で使える汎用型ギフトカードを発行し、人気のようです。

1980年のことでした。当時は、百貨店商品券やビール券、お米券のように、限定された店でしか使えないものしかありませんでした。

しかし、JCBの加盟店であれば、非会員であってもキャッシュレスで様々な買い物ができるギフトカードが登場し、流通業界での衝撃は破壊的でした。

ために、当初は扱い店数を絞り、紙幣類似法に抵触しないような工夫など、軋轢を避ける努力は相当なものがありました。

2000年代に入って市民権を得て急成長し、今や同社の発行残高は2千億円を超え、日本で最も流通しています。

5) ポイント制度

ネット通販はもちろん、家電やドラッグ、コンビニなどポイントカードが花盛りの今、日本全体の発行残高は1兆円に迫っています。(下図は、野村総研発表)

もはや景品の領域を超えて、電子マネーになりつつある各種ポイントですが、これ も実はカード会社のJCBが1981年に開発した「Joy Joyプレゼント」が日本初のプログラムでした。(右写真)

それまでも、グリーンスタンプやブルーチップというシール収集形式はありましたが、カード利用金額をコンピューターで累積管理し、ポイント換算する便利な仕組みに一変させたのです。

まとめ = “カードに学べ”

他にも、海外旅行市場の拡大に与えた影響など、カードシステムが日本の文化を変えた事例はいろいろありますが、くどいとJCBの宣伝臭くなり本末転倒になるので、そろそろまとめに入ります。

「昭和35年(1960年)に日本に導入され、政府の保護を受けない中で、昭和40年代から始まった経済成長やグローバル化、大量消費社会、長期デフレ時代をしっかり下支えしてきたのが、実はカードシステムであった」ことを、そろそろ国から素直に評価してほしいと、切に願います。

さしあたっては個人情報管理の頂点であるマイナンバー制度、さらには国際的イベントである2020年の東京オリンピックの成功に向けて、今こそ国家レベルでカードシステムを真剣に研究すべきで時ではないでしょうか。

「カードシステムは、アメーバーのように無定形ながら、高速で進化する史上最強の個別マーケティングシステム(CRM)である」。

これが、この世界に44年間住んできたカードバカの実感です。

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