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公開日: : 最終更新日:2015/12/08

カードバカ連載 カードあれこれ 「消費者目線とは、まず弱者の立場に立つこと」

特高は、反戦的・反政府的な市民の監視が役割でしたから、目的がまるで違います。弱い消費者の視点に立つこと、それが私の任務でした。

いつの時代も、失業者、低所得者、大病を患う人、知能や身体に障害のある方、高齢者、子供、子供のいる独身女性、差別やイジメを受けている方々、など社会的弱者と呼ばれる方々は少なくありません。

とりわけ、今の時代は、高齢者、低所得者が増えています。運よく強者の立場にいると、そのような方々の心理を推し量ることは並大抵でありません。

アンケートのような定量的調査だけではだめです。対岸の火事のような鈍感さが伴うからです。痛みという定性的要素を推し量る想像力を磨かないと、消費者の心はまったく見えないのです。

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一見、強者のみ対象にしているように思えるカードですが、強者と弱者は紙一重です。同じ人間ですから、現実的には境目などありません。相対的・流動的です。

ですから、いろいろな文献も読み漁りました。同時に、幼児のような素直な目を磨くように努めました。

独善を排除するため、考え方が柔軟な若い女性部下たちと「これは、本来どういう意味だろう。なぜ、こういう表現でなければいけないか?」と、絶えず意見交換しました。

傍で聞いていると、まさに子供のような会話だったかもしれません。結果、長年使い慣れた社内用語の思い切った変更も行いました。たとえば、「入会審査」を「入会判定」、「入会拒否」は「見送り」と改定しました。どちらも“上から目線”の響きがあったからです。

さらに、大量発行しているカード機関誌では、加筆・削除がタブーの署名原稿(有名人の実名寄稿)でも、人権を軽視したような表現があれば部分修正をお願いしました。

もちろん、言論の自由はありますが、「掲載の社会的責任」はカード会社も同罪だからです。原稿を持ち込んできた広告代理店からは、かなり嫌な顔をされたものです。

そういう観点で、帳票の改訂も行いました。カード会社最大の帳票は入会申込書ですが、一般消費者が誰の手も借りずに申込書を円滑に書き終えるのは結構大変です。

書く順番や、記入項目の意味、全体の整合性など、いろいろ迷いながら書く人は多いはずです。

もともとは、取引銀行の行員がご説明をしながら記入のお手伝いをしてきたのですが、カード募集ルートの多様化に伴い、お客様が一人で書くことが増えました。当時、記入不備も増加傾向でした。

そこで、「人間の心理と目の動線を科学する」べく、某大手フィルムメーカー専門チームと組んで設計を大幅変更したことがあります。

その他、同様の手法で、利用代金明細書、諸変更届などの基本帳票も全面刷新しました。在籍したカード会社は、カード業界全体のリーダーですので、それらは素早く他社から模倣され、スタンダードになって非常にうれしかったものです。

しかし、その後、法改正や様々な要因で記入項目が複雑多岐になり、書きにくいシロモノになりました・・・

働き盛りで、どちらかというと強者だった私に、「消費者目線とは、弱者の立場に立つこと」を正面から学ばせてもらった3年間でした。

カード会社からのスピンアウト

ところが、42歳になった時、18年もお世話になったカード会社を私は辞しました。「広く、一般的な視点で、カードを見直してみたい」一心でした。

当時、転職は社会人としての自殺を意味していましたので、周囲の猛烈な反対を受けました。当然のことながら、それから非常に厳しい現実にぶち当たり、退職を後悔する日々が続きました(詳細は省略します)。

幸い、半年後に大手楽器メーカーからお誘いをいただき、カード事業責任者として入社
できました。そして、この創業100年を超える老舗メーカーで、図らずも、カードの消費者目線とは何かを、実践的に勉強する事となったのです。

予想外の質問

最大手のカード会社に在籍していた実績は、表向きには当初から一目置かれていました。

一応、専門家として。ただ、何となく冷たい視線を感じる場面もありました。

あるとき、ベテラン社員から「小河さん、カードの利用額は日本全体でどれくらいの規模で、個人消費に対しどれくらいの比率なの?」と聞かれ、答えに窮したことがあります。虚を突かれた思いでした。

当時、日本全体で7兆円前後だとは認識していましたが、個人消費に対する割合などまったく知らず、冷や汗ものでした。

当時の指数で計算すれば、おそらく2%台になるか否かの比率で、カード会社在籍中に同僚との話題になることはなかったのです。

今でこそ、40兆円=13%台に達し、(遥か遠く先ではあるにしても)現金を超えることが現実的な視野に入ってきましたが、20年以上も前にこのような質問をしてきた人物には正直脱帽します。

当時はイジメと受け止めましたが、実は世界市場を睨んでモノ作りをしている大企業幹部らしいマクロな質問だったのだと思います。

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